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一枚奇譚  作者: 裃 左右
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えにっき

 どうでもいい話を一つ。

 俺は昔、友人の絵日記をのぞき見たことがある。

 まあ、今考えればなぜ読んだのかわからない。そういうことは、礼儀より何よりやってはいけないことだ、とは子供の頃から思っていたから。

 そもそもの始まりは、そう。俺が兄のCDを友人に貸したことから始まる。

 それは当時はやっていたアイドルのCDで、俺はあまり興味はなかったものだから、その曲名すら怪しいところだが、たまたまなにかの切っ掛けでファンだと言うことを知り、兄に内緒で貸したのだ。

 ただ、約束の期限が過ぎても返ってこなかったものだから、俺は兄にばれる前に彼の家へと向かわざるを得なかった。

 行ってみれば、彼は留守、彼の母親によれば部活動合宿に行ったとのことらしい。随分、いい加減な話だろう?

 差し障りのない程度に事情を話し、俺は彼の部屋に入れて貰った訳だ。

 CDは幸いすぐに見つかったのだが、机に投げっぱなしにしてある日記を見て、ふと興味がそそられた。もしかしたら、その時は仕返しのつもりだったのかもしれない。

 でも、俺は他人の日記なんかまじまじと読んで喜ぶ人間ではなかったので、さっと流して読んでいったわけだ。で、なぜかあるのは、その当日の日付。

疑問に思った俺は、そのページだけをしっかりと読んだわけだ。

 日記には絵が描かれていて、それはどこか見覚えのある部屋の絵。

 それはそうだろう、その部屋はどう見ても彼の、つまり、今俺が今いるこの部屋なのだ。

 さらに描かれているのは、部屋の片隅に小さな白い玉が落ちていて、その部屋の奥に誰かの背中がある。青い、ジャンバーを来ている誰か。

 赤いなにかが滴るその白い玉を、俺は最初ピンポン球かなにかだと認識した。

 それはどうでも良かった、そんなものよりも重要なモノがあった。

 そのページに書かれた一文、それが問題だった。


(今日、アイツが……)

(ぼくのこの日記を読んでいるのを、背後から見つめた)


 俺はその一文を見て、ゾクッと全身が寒気に襲われた。

 身動きが出来ない。そう、その日俺が着ていたのは、青いジャンバー。

 それでも勇気を振り絞って、ゆっくりゆっくり……振り向いていくと。


 ――誰も、いなかった。


 俺はすぐに部屋から出て、ろくに挨拶もせぬまま彼の家を後にした。

 それから彼と俺はなにもなかったかのように、それに触れることもせず、未だに友人でいる。後から思い返せば、あの時日記に描かれていた白い玉は……。

 はて、もしかして目玉、だったのかな。

 ……まあ、そんな、もうどうでもいい話。


 もしも、他のページもしっかりと読んでいたらどんな内容だったんでしょうね。

 まあ、そんなことはどうでもいい話。

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