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一枚奇譚  作者: 裃 左右
14/15

それは私だけの歌(もの)

幻聴とか幻視とか。幻覚ってなんで嫌なものがまず見えてしまうんだろう?

 歌声が聴こえる。

 私はそれが初めて聴こえたとき、思わず足を止めた。

 周囲を見渡してもどこから聞こえているのか、わからない。

「どうかした?」

 どうやら、私以外のだれにも聴こえていないらしかった。

 だれも気づいていない、けど、確かに聴こえる。

 歌詞はなく、言葉として表現できない。旋律だけの歌。かなしくもあり、うれしくもあり、全ての感情と言う感情がでたらめに入り混じったような混沌とした歌。

 それは胸を刺す。昔どこかで知った、そんな痛みが胸を刺す。

 どうしようもなく孤独なのに、一人じゃない。そんな力強さがある。

 どこから聴こえているのか。だれが歌っているのか。

 なぜだれも気づかないのか。

 いくつかの疑問を抱きながらも、いつしか私は、その歌声に自然と耳を澄ませ身を任せる。

 ずっとその歌声を聴いているうちに、私はその歌を自然と口吟くちずさむようになった。

 私がそうすることで、私と言うフィルターを通して世界にようやく歌が届いた。

 誰も知らない歌。たった一人が知っている歌。

 でも、私の喉を伝って流れ出るその音は、その歌には程遠く、どこか濁っている。

 外に歌を伝えきれない自分に怒りと、自分が感じているものを伝えきれない切なさが胸に溢れた。

 どうしたら、そのままを伝えられるんだろう。

 どうしたら、同じように感じてくれるんだろう。

 なぜ――私にはそれができないんだろう。

 ……ずっと、そう思っていた。

 でも、ある時聴こえてきた。それは聴きなれた、でも、まるで違うメロディ。

「……ん、なに?」

 私の視線に気づき、友達は首を傾げてみせる。

「……あの、いまの」

「ああ、いつも誰かさんが歌ってるからさ。ついつい伝移うつっちゃったよ」

 それは、よく聴けばあの歌とは似ても似つかないものだった。

 技術とか、そんなものじゃなくて、上手いとか下手とかそんなどうでもいいことじゃなくて。

 もっと根本的な込められている思いとか、感情とか、目に見えない成分が違うものだった。

 でも、私は……それが綺麗だと思った。

 それは私が歌いたかった歌じゃない。でも、友達の歌った歌は、その友達の持っているその人だけの思いや感情が込められたオリジナルの……とても魅力に溢れたものだった。

「え、なに!? もしかして泣いてる!!」

 なんか嬉しくて、悲しくて。それだけじゃなくて。

 ―――どうしようもないくらいに、負けたくない、とそう思った。

なんか複雑な話。いや、話は単純なんですけどね。

もうすこし、書きようあったかな?

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