No.008 口説
『口説』
やぁ、マンモーニの諸君。
俺はイタリアでナンパの修行を積んだプロナンパ師。
通称、恋のテンペスタと呼ばれている。
イタリア人は十秒もあれば一人の女性を口説き落とせる。
君らがカップラーメンを作ってる間に十八人という計算だ。
自らを鑑みて現状を悲観してしまっただろうか。
だが安心してほしい。
優れた技術とは盗むためにあるもの。
特別に一つ例をお見せしよう。
「痛くなかった?」
「え?どこも怪我してないけど…」
「天国から落ちてきてさ」
「(きゃぁぁぁぁ!)いや…そんな…(照)」
「今頃天国は大騒ぎじゃないかな」
「ん…?」
「君という天使がいなくなってさ」
「(ふぁぁぁぁぁ!)何言っているのよ…もう…(惚)」
完全に落ちたことが分かるだろう。
ポイントは大きく分けて二つある。
その①:女性を天使に例える。
相手は人類の限界を超えた美しさと言われたも同然。
その②:意味不明なことを言ってからの決め台詞。
まずは隙を作り、そこを見逃さずいっきに攻め込む。
これ即ち兵法の基本なり。
俺にかかればどんな場所でもナンパは成功するだろう。
たとえ銭湯のロビーだって余裕だ。
「いつも頭洗うとき大変じゃない?」
「え、別にそんなことないけど…」
「頭の上の輪っかが邪魔になってさ」
「…?」
「今頃女湯は大騒ぎじゃないかな」
「…?」
「排水溝に天使の羽が詰まっちゃってさ」
「…どうして分かったの?
私の正体が国際テロ組織エンジェルの幹部だってこと。
いつから気付かれてたのかしら」
「ずっと前からさ。長年、お前の素性を探っていた」
「はぁー、私もここでお終いってわけね」
「上からはすぐにお前を消せと言われている」
「いいわ。早くやりなさいよ」
「バンッ…。
今、俺は銃を撃った。でもお前は死なない」
「ふざけてるの?」
「天使は銃なんかじゃ殺せないだろ?」
ずきゅぅぅぅぅぅん!
それは俺が女性の心を撃ち抜いた音。
ではなかった。
本物の銃弾が女性の胸を貫いた音だった。
「そんな…どうして…」
「痴話喧嘩なら他所でやんな」
番頭のおばちゃんの手には、硝煙の昇る銃が握られていた。
「お前はいったい何者だ!」
「あたしはだたの掃除屋さ」
「まさか…お前もエンジェルの…」
「もう組織には必要なくなったみたいだからね」
「外道め!エンジェルは…俺が絶対叩き潰してやる!」
こうして、俺と天使達の戦いが始まった。




