No.004 空遊
『空遊』
「空に浮かぶ国を見た」
それが父さんの遺した最後の言葉だった。
家族も親戚も村のみんなも、誰も信じようとしなかった。
それでも、俺だけは信じた。
父さんは狂人扱いされたけど、狂ってなんかなかった。
あの時も悔しさに涙を流していたんだ。
ここ最近の俺は仕事もせずに空を飛んでいる。
もちろん、空に浮かぶ国を探して。
何の手がかりも得られないまま日々が過ぎ去っていく。
妻と子どもからはとうに見放されている。
叶うのであれば戻って来てほしいが、後悔はない。
これは俺に課せられた使命だから。
ある日、予想外に荒れた空へ突っ込んでしまった。
一刻も早くこの一帯から遠ざかるべきだ。
普通ならそう考えるが、だからこそ可能性がある。
根拠のない期待が胸を埋め尽くしていた。
容赦ない暴風により上下左右が目まぐるしく入れ替わる。
片翼は外れかけ、もはや操縦桿の制御は効かない。
より前へ、より前へ。
ただそれだけを考えてひたすらに突き進んだ。
当然、そんながむしゃらな特攻が上手くいくわけもなく。
とどめを刺したのは至近距離で発生した雷だった。
とんでもない光と衝撃を感じ取った俺は意識を失った。
…俺は死んだのか。
ここは天国か地獄、どっちなのだろう。
目の前には巨大なゲートがあり、何やら張り紙がされている。
そこにはこう書かれていた。
<東京ディズニースカイ 二千三百年開園予定>




