No.003 気無
『気無』
とある学校のとある部活。
全国大会出場という夢に向けて血の滲むような特訓の日々。
その名も。
やる気なし部。
「おい!やる気あるやつは帰れよ!
どんなに誤魔化そうとしたって俺には分かるんだよ!
ランニングの時にダルそうな掛け声で走ってたよな。
本当にやる気ないやつは口パクしかやらないんだよ!
あと猛暑日だってのに誰も水飲みに行かなかったよな。
喉乾いたら喫茶店で小一時間はサボれよ!」
やる気なし部。
それはやる気を出すことの一切を禁じられ、
やる気のなさが何よりも評価される部活である。
「だいたい大会までもう一週間切ってるんだぞ!
何でこの大事な時期に全員参加してるんだよ!
どう考えても今が一番のサボり時だろ!
そんなんで勝ち進めるほど大会は甘くないぞ!
強豪校なんて今頃はモンハンで盛り上がってるはずだ!
少しはエースの田中を見習えよ!
入部届を出したっきり一度も見かけたことないぞ!
本当にこの学校の生徒なのかも怪しいぐらいだ!
そもそもお前らには自覚ってもんが…ゴホッゴホッ」
突然だった。
部員に喝を入れていた部長が、血を吐いて倒れた。
「ぶ、部長…!」
どうすればいいのか分からずうろたえだす部員達。
そこに、一人の男が現れた。
「落ち着け!保健室の先生はもう呼んである」
「あなたは…田中先輩!」
エースの田中先輩だった。
「お前らに言っておきたいことがある。
部長が倒れたのには理由があるんだ。
持病の関係でドクターストップがかかっていたらしい。
でも今年こそはって気合い入りまくりでな。
ここ数日、ライバル校のデータ集めで徹夜続き。
その結果がこれだよ。
ほんと人のこと言えないよな。
おっと、この話は口止めされてるから内密にしてくれよ」
真実を知り、今までにない熱い気持ちが込み上げる部員達。
「まぁそういうわけだから、負けられないよな!」
「はい!」
「部長のためにも絶対勝つぞ!」
「はい!」
「行くぞ、全国!」
「はい!」
大会当日。
田中先輩は急用を思い出したらしく会場には現れなかった。
そして、やる気全開の部員たちは一回戦敗退となった。




