3/9
No.002 観察
『観察
カブトムシの観察日記を始めよう。
帰省してもやることのなかった僕は思い立った。
そうと決まればまずは捕まえる準備だ。
近所の雑木林へと向かい、特製のバナナトラップを仕掛けた。
明くる日、一箇所ずつ罠の場所を確認して回ったが、
期待も虚しくカブトムシは捕まえられなかった。
だけど僕は気付いてしまった。
何もいないってことは、そこには 無 がいるんだってことに。
逃げられる前に僕は急いで 無 を『』の中に閉じ込めた。
『無』はずっと見ていても飽きない。
姿形は分からないけど、きっと可愛げのある奴だ。
カブトムシよりもかっこいい可能性だってある。
いいことを考えた。
友達の吉田君にも見せてあげよう。
悔しそうに羨ましがる顔が今から目に浮かぶ。
「変なの見せんなよ」
と言われた。
僕は怒って吉田君を帰らせた。
『無』は傷ついたに違いない。
その日の夜、『』から 無 は逃げ出した。
僕は 無 を探しに雑木林へと急いだ。
暗闇の中を走り続けたがどこにも見つからない。
どんっ。
何かにぶつかった。
携帯のライトで辺りを照らしてみた。
何だこれは。
透明の壁が僕の目の前にあるようだった。
上を見上げたら目が合った。
あぁ、なんだ、そういことか』




