No.025 起源
『起源』
今日は回転する日。
私は回転しながら朝の支度を終え、余裕を持って出勤する。
街ゆく人もみんな回転しながら歩いている。
近くの人とぶつからないように慎重だ。
回転しながらぶつかると、互いに相手を弾いてしまう。
それで道路に飛び出してしまったなんて話も珍しくない。
こんな日ぐらい有給を取ればよかった。
そう思いながらも、毎年出社している私は立派な社畜だ。
全くと言っていいほど仕事は捗らない。
普段は数分で終わる仕事も数時間はかかる。
回転する日、なんて非効率な日なんだ。
部下とはいつも同じような愚痴を言い合ってる気がする。
「今日はもうぱーっと寿司でも食べに行きましょうよ」
「俺の奢りでとか言うんじゃないだろうな」
「もちろん言うに決まってるじゃないですか」
「まぁ、回転しながらも頑張ってくれたから特別だぞ」
仕事を切り上げ、私達は行きつけの寿司屋に入った。
「お客さん、シートベルトは締めてくださいね」
回転する日は椅子も回転する。
言われなくてもシートベルトを締めるのは常識だ。
大将が回転しながら寿司を握ってくれる。
「先輩、回転しながら食べるの上手いですね」
「この日のために家族と一緒に練習してきたからな」
「なんか微笑ましい光景が浮かびました」
「たまに思う事があるんだけどさ」
「何ですか」
「俺たちじゃなくて寿司が回転してたら面白くね」
「はは、確かに。コントの設定みたいですね」
「ちょっとお客さん!」
「え、あ、はい」
「あんたそれ…天才の発想だよ」
このやり取りが回転寿司の起源と言われている。




