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No.001 礼儀
『礼儀』
いつも通りの通勤路が、いつも通りではなくなった。
いつも通りではない、変なおじさんがいた。
「おめでとう!」
と目の前を通る人を祝っては笑顔で拍手している。
何の意味があるのかは全く分からない。
主婦、サラリーマン、女子高生。
祝われた側も気味悪がり足早に去っていった。
当然というか、俺も同じように祝われた。
とっさに「ありがとうございます」と返してしまったが、
おじさんは特に反応しなかった。
その日の夜、ニュースを見て背筋が凍りついた。
<〇〇周辺で相次ぐ連続殺人>
ここって、家からすぐ近くの場所だ…。
しかも被害者の三人の顔には見覚えがあった。
今朝、自分の前を歩いていた人達。
おじさんに祝われた主婦、サラリーマン、女子高生。
何で…どうして…。
まさかあれは呪いの言葉だったのか。
いや違う。
呪いなんて存在しない。
前に似たような話を聞いたことがある。
なぜか見知らぬ人が通りすがりの人に挨拶するって話。
たしか、挨拶を返さなかった人が殺される。
挨拶を返した人だけが生き残るってオチだ。
おじさんはお礼を返さなかった人を殺している。
俺は…俺はちゃんとお礼を言っている!
「おめでとう!」
振り返ると、おじさんが笑顔で拍手していた。
俺はとっさに警察を呼ぼうとしてしまった。




