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No.013 詐欺

『詐欺』


「はい、もしもし」


「わんわん!」


「ゴン太か?」


「そうだわん!ゴン太だわん!」


「おー元気にしとったか?」


「それがちょっと困ったことになってるわん…」


「何かあったのか?」


「バイク事故に遭って前足の手術代が必要なんだわん…」


「それは大変だ!いくら必要なんだ?」


「五十万くらいあれば足りると思うわん」


「そうか、待っとれすぐに用意してやる!」


「本当かわん!今から言う口座に振り込んでほしいわん!」


「ばあさん!ゴン太が大変なんだ!今すぐお金を!」


「何言ってんだい。ゴン太なら今遊びに来てるじゃないか」


「にゃー」


「…」


「前足治った気がするわん!それじゃあわん!」


ガチャッ。


まさかゴン太が猫だったとは。


気を取り直して次だ。


「はい、もしもし」


「にゃーにゃー!」


「タマか?」


「そうだにゃ!タマにゃ!」


「おー元気にしとったか?」


「それがちょっと困ったことになってるにゃ…」


「何かあったのか?」


「バイク事故に遭って前足の手術代が必要なんだにゃ…」


「それは大変だ!いくら必要なんだ?」


「五十万くらいあれば足りると思うにゃ」


「そうか、待っとれすぐに用意してやる!」


「本当かにゃ!今から言う口座に振り込んでほしいにゃ!」


「ばあさん!タマが大変なんだ!今すぐお金を!」


「何言ってんだい。タマはもう…去年の夏に交通事故で…」


「…」


「分かっとるさ。そんなこと、分かっとる」


「これはタマのことを守れなかった、自分勝手な償いなんだ」


「あれはおじいさんのせいじゃないわ!」


「わしがあの時に目を離したから!」


「そんなこと!」


「全部わしのせいなんだ!」


「それは違うにゃ!」


「タマ…」


「僕が不注意に道路を渡ろうとしたんだにゃ」


「おじいちゃんはすぐに僕を止めようとしてくれたにゃ」


「でも、僕はそれを無視して道路に飛び出したにゃ」


「だから、だからおじいちゃんは何も悪くないんだにゃ!」


「わしを、許してくれるのか…?」


「そもそも初めからこれっぽっちも恨んでないにゃ」


「ありがとう…ありがとうな…」


「お金はもう必要なくなったにゃ」


「そうなのか?」


「おじいちゃんが元気でいてくれたらそれでいいにゃ」


「そうか…うっ!」


「おじいちゃん!どうしたにゃ!」


「おじいさん!まさか持病が!」


「早く救急車を呼ぶにゃ!」


「今回ばっかりは助からないかもしれない…」


「そんな、どうしてにゃ!」


「手術代を…払えないから…」


「…いくらにゃ?」


「百万…」


…。


通帳の残高を確認すると、百万とちょっとだった。


詐欺ではなく、道を踏み外す前にせっせと仕事で貯めた金。


はは、柄にもなく運命ってやつを感じてしまう。


まぁ残念なことに、これ以上有意義な使い道はなさそうだ。


「お金の心配はいらないにゃ」


「え…?」


「いいからおじいちゃんに手術を受けさせるにゃ!」


「どうゆう…」


ガチャッ。


その後。


「手術代にはこれを使うにゃ」


と書いたメモと共に百万をおじいちゃんの家の前に置いた。


手術は成功したのだろうか。


そもそも手術は行われたのだろうか。


それは分からないし確かめる気もない。


もしかするとこの話のオチは、


逆に俺が騙されてしまった、になるのかもしれない。


そうだとしたら実に滑稽な話だ。


我ながら最高に情けない話だ。


でもそんなことはどうだっていい。


誰かに騙されようが、結果的に損しようが、


自分の行動に自分で納得できていればそれでいいんだ。


それに…あの家に行った時に友達もできたしな。


「にゃーにゃー!」

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