No.011 降霊
『降霊』
「実録!インチキ降霊術師の正体を暴くぞ大作戦!」
「ようやく始まったね、前田君」
「待たされましたよ、橋本さん」
「この企画、かなり前からやるやる詐欺してたよね」
「本当に。視聴者の皆さんもお怒りですよ」
「待たせた分はちゃんと動画の面白さで返すから」
「あんまりハードル上げない方がいいですって」
私達は界隈ではそこそこ有名な心霊系のユーチューバーだ。
今回は目玉企画の撮影のため、とある山道を進んでいる。
その先で、小さな山小屋へ辿り着いた。
「本日のターゲットがいるのはこの山小屋!」
「ここに例の降霊術師がいるんですね」
「出来もしない降霊術で高額の報酬を踏んだくるって噂のね」
「失礼しまーす。降霊をお願いしまーす」
「ノリが軽いですよ」
「どうぞ、お入りください」
二人の男はそれらしき雰囲気のある一室へ通された。
「この度はどなたの降霊を希望されますか」
「私とこの後輩の共通の友人である前田君です」
もちろん嘘である。
前田君は私の隣にいる後輩だ。
これで前田君を降霊したと言い張るものなら、インチキ確定。
前田君の手元の隠しカメラで証拠も押さえられる。
降霊に必要と言われた前田君の情報を書いた紙を渡す。
「確かに。報酬は五十万ですが、よろしいですか?」
「はい。お願いします」
数分間、天を仰ぎなら怪しげな呪文を繰り返す降霊術師。
「きぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
突如、恐ろしい形相で叫び始め、そして動かなくなった。
「まだパフォーマンス中かな?」
「信用度ゼロの言葉はまだ使わないでください」
「あれ…ここは…」
「やっと降りてきたみたいだね」
「何から話してみましょうか?」
「橋本さん…何やって…」
「ちょっと待て。なんで私の名前を知ってる」
「たぶん僕らの動画の視聴者なんですよ」
「なおさらおかしい。それならどうして依頼を受けたんだ」
「あ…!あぁ…!」
前田君を降ろした降霊術師は、前田君のことを見ている。
「逃げて…!そいつから…!」
「あはは、面白いパフォーマンスですね」
「前田君、カメラはどうした」
「捨てましたよ」
「…お前は何なんだ」
「やだなぁ、冗談はよしてくださいよ。
僕は橋本さんと前田君の共通の友人、前田君じゃないですか」
前田君を名乗るそいつの顔は、私の顔になっていた。




