No.009 一年
『一年』
十二月「この中から要らない月を決めなければならない」
一月「え…いきなりすぎませんか!」
十二月「上層部が決めたことだ」
二月「今までみんなで頑張ってきたのに…」
三月「そんなの勝手すぎますよ…」
四月「で、誰が抜けるってわけ?」
十二月「全員で納得のいくまで話し合う。決まらなければ…」
五月「多数決か」
十二月「そういうことだ」
…。
誰も発言しようとしない。
場は重苦しい空気に包まれていた。
六月「これじゃあいつまで経っても話が進まねぇよ」
七月「この中に要らない月なんてないからよ」
六月「それなら、この中で一番の怠け者が抜けるべきだ」
八月「皆それぞれに役割を全うしている」
六月「本当にそうか?いるだろ、明らかに日数の少ない月が」
二月「え…」
十月「待てよ!二月の日数は決められていたことだ!」
六月「だが事実であることには変わりない」
二月「そんな…私はずっと一所懸命に…」
十月「少ないからこそ、二月は誰よりも頑張ってきた!」
六月「お前が必死に二月を庇う理由も知ってるんだぜ?」
十月「い、今そのことは関係ないだろ!」
六月「いいやあるね。組織内の恋愛はご法度だ」
四月「あんたらってできてたの?」
九月「あらあら」
二月「違うの!私から一方的に!」
十一月「もういいでしょう!」
話の流れを断ち切るには十分な声量だった。
十一月「話し合いの目的を見失っているように思えます」
十二月「その通りだ。少し落ち着いた方がいい」
六月「ちっ…」
その後の話し合いも意義のある内容とは言い難かった。
やはり最終的には、多数決を取るための投票が行われた。
十二月が代表して結果を確かめる。
十二月「明日、この結果を上層部に伝える。今日は解散だ」
各々、何も言わずに席を立ち、部屋から出ていった。
ただ二人、十二月と六月を除いて。
六月「十二月さん、今までお世話になりました」
そう言って六月は頭を下げた。
十二月「あれ以外にも方法あったろ。自分に票を集めるには」
六月「今後のためにもっすよ」
十二月「ほう。詳しく聞かせてもらおうかな」
六月「誰かが憎まれ役にならないと雰囲気悪くなるでしょ。
あいつら、みんないい奴っすから」
十二月「お前は不器用な奴だけどな」
六月「へへ。十二月さんに言われると悪い気しないっす」
十二月「もうこんな時間か」
六月「いつの間にかっすね」
十二月「そういえば六月」
六月「はい…?」
十二月「お世話になりましたはまだ早いぞ」
六月「え…」
十二月「投票結果をお前にだけ教えてやる」
六月「そんなの俺が断トツに決まって…」
十二月「いいから聞けよ。一月…一票」
六月「何で…」
十二月「二月一票、三月一票、四月一票、五月一票、
六月一票、七月一票、八月一票、九月一票、十月一票、
十一月一票、十二月一票、以上だ。
結果は全員同率一位とでも言ったところか、はっはっは」
六月「そんなの嘘に決まってますよ!」
十二月「本当だよ。皆、一票ずつ自分に投票したんだ。
演技が下手すぎるんだよ、大根役者め」
六月は素早く十二月に背中を向けた。
今の自分の顔を見られたくなかったのだろう。
歪みに歪みきった、泣き顔を。
後日談。
十二月は上層部へ「不要月なし」と報告を上げた。
すぐに却下されるかと思いきや、すんなりと承認された。
曰く、トップのお孫さんからのクレームが事の始まりらしく。
「一年をもっと短くしろ」との要望があったそうだ。
それが月毎にイベントがあるから「やっぱなし」だと。
十二月「今回の騒動は一件落着というわけだ」
六月「なんだそりゃって感じっすね」
十二月「もう一つ嬉しいお知らせもあるぞ」
六月「もしかして給料アップっすか!」
十二月「新人の十三月がアルバイトで入ることになった」
六月「え!まじっすか!美女っすかね!」
十二月「そんなこと言ってると、九月に愛想尽かされるぞ」
六月「何で知ってるんすか!」
十二月「演技が下手すぎるんだよ」
一年は少しの間だけ十三ヶ月となった。
一週間で十三月は辞めてしまい、今は十二ヶ月に元通り。
一年の裏側には十二人の功労者がいる。
その壮大な真実に、まだ誰も気付いていない。




