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騒がしい同居人  作者: 小桃 綾


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2/2

引っ越し初日

「お疲れ様です。ありがとうございました」


 荷物の搬入が終わり、最後にトラックの荷台に降ろし忘れがないことを確認してドライバーさんに声をかける。


 引っ越しは会社がサポートしてくれました。

 物流関連の会社だから安く手配出来たんでしょうね、会社が手配したのは引っ越し業者ではなく付き合いのある運送業者の2トントラックでした。荷造り荷解きのオプションなんてもちろんありません。ドライバーさんが不憫に思ったのか洗濯機と冷蔵庫の搬出と搬入、設置まで手伝ってくれました。泣くかと思いました。


 家の前の自販機にドライバーさんを呼んで、お金を入れて好きなジュースのボタンを押してもらいました。せめてもの御礼です。


 遠ざかって行くトラックを見送って部屋に入ると、壁際に積まれた段ボールが目に入る。現実逃避したくなるけど明日は仕事だし、そのためには今日中に最低限の荷解きを終わらせないといけない。今日の晩御飯はコンビニ弁当で済ませるとして、夕方近いこの時間で必須なのは身支度絡みの荷解きとベッドの組立てだ。荷造りするときにちゃんと"入れたものと開ける優先度"を段ボールに書いておいたので、衣服も化粧品もすぐ見つけられた。段ボールを開けて中身を取り出していく。


 次はベッドの組み立て。重くて大変だけどこれさえ終われば休める。他の荷解きは生活しながら何とかなるし頑張ろう。

 ヘッドボードと左右のフレームを床に並べて、気合を入れながら六角レンチを手に取った。



 頑張って組み上げたベッドに腰を下ろして、買ってきたコンビニ弁当を食べ始める。時計を見ると21時を過ぎたところ。急いで食べてシャワーを浴びて眠らなきゃ。


 翌日出勤するために必要な準備が終わって、私は電気を消してベッドに横になりました。



  ▼



 深夜、ふと目が覚めて寝返りを打った瞬間、見慣れない変なものが見えた。初めての部屋だから見慣れないのは当たり前だけど、明らかに変なもの……。


 部屋の隅に、何かが立っている。


 一瞬、状況が理解できなかった。

 暗い部屋の中で、そこだけがぼんやりと青白く浮かび上がっている。


 ……人?


 そう思った瞬間、背中に冷たいものが走った。

 30代くらいの女性。長い黒髪に、真っ白な着物。着物の胸元のラインが妙に目に残る。


 ほとんどの人が『美人』と言いそうな整った顔をしているのに、その表情はひどく悲しげで、何も言わず、ただ私を見ている。


 ──ホントに、いた。


 恐怖で目を合わせていられず、布団を被ってぎゅっと瞼を閉じる。

 見られた。気付かれた。私が見ていたことは確実にバレてる。


 どうなるの?

 何か、されるの?


 部屋の中は異様なほど静かで、時間だけが過ぎていく。さっきの幽霊が気になるけど、もし布団の中を覗き込む顔が間近にあったら……。息の仕方も忘れて、ただ布団の中で縮こまった。

 

 何も起きないまま、どれくらい時間が経ったか分からない。窓の方から雀の鳴き声が聞こえた気がして、恐る恐る目を開けて布団から顔を出す。


 夜が、明けていました。


 女の幽霊が立っていた場所を見ても何もない。コートハンガーは違う場所に置いてあるので見間違えじゃないはず。でも……寝ぼけていた可能性をまだ捨てたくない。


 そう自分に言い聞かせながら、身支度を整えて仕事に出かけました。

 その日の深夜。

 また昨夜の幽霊を見て、この部屋で起きていることが『勘違い』ではなくなってしまいました。

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― 新着の感想 ―
同居人のいる引っ越し先。 どうせならルームシェアになっていたら、家賃が半分になったのに。幽霊じゃ家賃を払ってくれないよ(-ω-;)
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