来年は……
年の瀬が迫る頃、ホームセンターで注文したものが自宅に届いた。
以前から欲しいと思って、でも必須ではないから踏ん切りがつかなかったもの。それは……こたつ!
寒い季節もエアコンと暖かい服装で過ごせるから絶対に必要なものではなかった。でも置き場所があるなら、やっぱり欲しくなる。
早速こたつを組み立てて、使っていたテーブルを片付けてこたつと置き換えた。
幽子さんは嬉しそうな表情でこたつに入って座る。
小さいこたつだけど幽子さんなら中で足が当たることがない。
温度を感じないならこたつに入っても意味ないんじゃない?
そう聞くと、億劫そうにこたつから手を伸ばしてパソコンに文字を打った。
こたつはにほんじんのこころ
わかるー。だから買った。無粋なことを言ってごめんなさい。
これで冬の楽しみができたしお正月ものんびり過ごせる。毎年冬になるのが待ち遠しくなりそうだ。
来年はカーテンを買い替えようかな。
こたつに入って部屋を見回し、自分と幽子さんの好みに合う部屋にすることを考えていた。
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仕事が終わり、上司に送ってもらって家に入る。閉じたドアを見ると、郵便受けに封筒が入っていた。
……不動産屋からの封筒?
契約更新は今年の春に手続きした。どんな内容なのか見当も付かない。変な時期に届いた『重要』と赤字で表示された封筒に違和感を覚えながら、玄関で封を開けてみた。
『貸主の意向により、このアパートは取り壊すこととなりました。工事の開始は来年の秋を予定しております。新居の紹介も承りますので、来年9月末までに退去をお願い致します』
………何、これ。
文字は読めるのに、意味が頭に入ってこない。
こんな紙切れ1枚で、終わらせられるの? 貸してる方が立場は上かもしれないけど、こんなの、こんなのって……
部屋に入ると、幽子さんは何も咲いていない鈴蘭の鉢植えを見ていた。気持ちが落ち着かないまま、手紙の内容を話す。
「来年の秋までに、ここを出ないといけないって。……幽子さん、ここから動けない? 一緒に引っ越そう?」
静かな部屋の中、彼女は私を見た。
それから、ゆっくりとおはじきに手を置いた。




