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極東風紀調査隊アルファ  作者: スマ甘
chapter.1 『I'll wait for you there forever if I have to.』
2/5

 技術革新が進んで、動物と人間から生まれた獣人「アルファ」が生まれたのが冷戦時代。

 たくさんのテクノロジーが生まれて、新しい時代の象徴だった国際宇宙ステーション「アヤナ」が事故を起こして30年。

 

 ボクの名前は霧咲マオ。

 すっかり様変わりした日本で暮らしてる小学生。

 ボクが暮らしている街は、こどもの国って名前のテーマパークがあった街なんだけど、あの事故が原因で⋯⋯その場所は無くなった。

 いまはアヤナの残骸を中心に都市が造られていて、お金持ちはその都市で生活している。

 それ以外の人々は、復興計画も取り消されたエリアで、あのときから時間が止まったままのスラムで、身を寄せ合って生きている。

 ボクもまた、スラムで子供たちといっしょに暮らしていた。

 

「マオー。 おじさんが呼んでたよー!」

 

 ボクが寝泊まりしている廃墟のカプセルホテルに、仲の良い女の子、アカリちゃんがやって来た。


「わかった」


 ボクは返事だけして、ジャージからシャツに着替える。

 アカリちゃんが言う「おじさん」とは、この辺りのスラムを治めているヤクザ『勇導会(ゆうどうかい)』の組長、『宗像功(むなかたいさお)』のことだ。

 

「俺が部屋に行こうか?」

 

 入口の方で野太い声がした。


「片付いてないからダメ」


 功さんも、アカリちゃんといっしょに来ていたらしい。

 

「おじさんがここに来るなんて珍しいね」

 

 早足で入口に向かうと、見慣れた人影が壊れた自動ドアの前に立っていた。

 

「きみに頼みたいことがあってね」

 

 シワひとつ無い黒のスーツに、ぴしっとした白のワイシャツ。

 都市でしか買えなくなった新品の服を着て、功さんはボクを待っていた。

 

「頼みごと?」

「道案内を頼みたい」

「道案内?」

 

 どこかから爆発音が聴こえてくる。

 

「日本に潜入した外国人を、事務所と都市まで案内してほしい。 できれば治安維持局と交戦しないルートで」

「なんでボクに頼むの?」

「きみは抜け道に詳しいだろ」

 

 ボクと功さんが話している間、爆発音に混ざって銃声も聴こえてきた。

 

「その外国人は何者なの」

「国際風紀調査隊、IPMIだ」

「IPMI⋯⋯」

 

 国際風紀調査隊。 IPMIとも呼ばれる組織は、最先端技術などを悪用した犯罪を取り締まるために国連が設立した組織だ。

 この組織はスイスに拠点を置いていて、どこかの国で最先端技術を悪用した犯罪が起きた場合、その対応のためにエージェントを派遣する。

 

「金持ちがどこかで密輸でもやったんだろう。 それで、治安維持局や日本のお偉い方は火消しに躍起になって、どんどん戦力を投入してる。 だからこの網をすり抜けて都市に潜入するのに、優秀な案内係が必要ってワケだ」

 

 アヤナには、簡易的な補修を目的とした自己増殖型の擬似生体パーツが使われていた。

 そのパーツは、事故で墜落したあとも稼働していたから再利用されて、都市を造るための基盤になった。

 ただ、スラムに近い部分は雑に作業をしたせいで、複雑に入り組んだ地形になっている。

 あんな場所で迷わずに目的地へたどり着けるのは、毎日ジャンクを探して歩き回っている子供たちだけだと思う。

 

「案内するのはいいけど、報酬は?」

「子供たちのハウスに使えるプレハブ小屋をいくつか持ってきた。 ヒーターも最新機種を揃えてある」

 

 功さんは、優しいおじさんに見えて、ズルいところもある。

 冬に向けて誰もが欲しがるものを用意してくるんだから。

 

「頼みごとは引き受けるよ。 ただ⋯⋯」

 

 どこかでまた爆発音がした。

 その音は、さっきよりも近くなってる。

 

「そのIPMIって、いままさに治安維持局とドンパチやってる?」

「港のレジスタンスが暴れてたところに居合わせたらしくてな。 かなりの戦力を相手にしてるぞ」

 

 治安維持局は、普通の人間の隊員は都市にだけ配置して、スラムには戦闘用ロボットを配備している。

 かなりの戦力ってことは、歩兵タイプ以外に、対戦車用の機種まで投入してるかもしれない。

 

「ボクも助けに行くよ。 待ってたらその人たち死にそうだし」

「そうか。 俺は事務所で待ってるぞ」

 

 功さんは、それだけ言って迎えの車に乗り込む。

 功さんは必要最低限の会話だけしないから、次の行動に移るのが速いんだ。

 

「アカリちゃん。 倉庫からボクのオメガを持ってきて」

「オッケー。 鞘の形をしたやつでしょ?」

「それで合ってる。 あとメディカルキットとかエネルギーのカートリッジもよろしく」

「りょーかい」

 

 ふざけて敬礼をしてから、アカリちゃんは倉庫のほうに走っていった。

 ボクは、爆発音がする方向に視線を移して、立ち上る黒煙を眺める。

 

「IPMIと合流したら、もっと静かに行動しろって言っとこ」

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