第99話 呼子のイカ
「イカ食べましょうよー。鮮度が命ですよー。」
「そうだよね、食べよう食べよう。」
「本当に透き通ってるんですね、イカって。」
「これ、呼子のイカですね。店長、張り切って仕入れましたね。」
透き通ったイカをパクっとな。うわ、甘い!そして、コリコリした食感、今まで食べたことあるイカの刺身とは違うな。
「甘くてコリコリー。」
柏木さんのうまみの舞がさく裂している。
「うん、うまいね。昔一度呼子で食べたことあるんだけど、やっぱり、うまいね。」
「あら、飛鳥馬さん、呼子行かれたことあるんですね。私、佐賀出身なんですよ。」
と、井上さん。
「はい、まさに、佐賀の知り合いに連れてってもらったんですよ。特に呼子に連れてってくれって言ったわけじゃなかったんですけどね。佐賀に来たら行かなきゃだめだって言われて、正直、わざわざイカの刺身食べに高速乗ってまで行くなんて、ちょっと、と思ったんですよね。でも、出てきたイカは透き通ってるし、うまいし、びっくりしましたよ。」
「あぁ、なるほど。私も九州以外から来た友達は呼子に連れていきますね。佐賀人の定番案内スポットですね。」
店長とスタッフが入ってきた。
「お待たせしました、焼酎飲み比べセットでごす。」
スタッフがコップを3個ずつ飛鳥馬さんと柏木さんの前に置いて、店長が一升瓶から注いでいく。
「今日のセットは麦焼酎、大分の『由布錦』、で、次が芋焼酎で鹿児島の『薩摩大泉』、最後も芋で『五島の天女』でごす。」
「ちなみに店長の一押しってどれですか?」
「もちろん『薩摩大泉』、これはまっことうまかとですよ。って、おい、鹿児島人なんで鹿児島の焼酎がいっとう好きなんですわ。」
「なるほど、それはそうですね。地元にうまい酒があるって良いですね。」
「楽しんでください、『薩摩大泉』。じゃ、ゲソ天ぷら作って持ってきますんで、ごゆっくりどうぞ。」
「ではでは、早速『由布錦』から行きますかね。」
飛鳥馬さんの一人ゴチ飲みが始まったぞ。
「あれ?そういえば、下田さんはお酒じゃないんですね?」
「えぇ、オレは未成年なので。スプライトです。」
「えー、独立小隊に未成年の方が居たとは知りませんでした。」
「うちのルーキー、可愛いでしょー。」
柏木さんがオレの方を指さしてクルクル回している。
「下田くん、こう見えても大学院まで飛び級で卒業してる天才少年なのよね。ただ、かなりオタク入ってるんだけど。」
「天才少年じゃないですよ。オタクは・・・否定しませんけど・・。」
「えー、オタクなんですか。なんか急に親近感が湧いてきました。どっち系なんですか?アイドル?アニメ?鉄?」
「オタクというか、アニメは好きです。アイドルオタクじゃぁないですね。鉄は、少し鉄分あるかもしれないですけど、全然オタクってレベルじゃないです。」
「アニメですか。私は漫画、アニメ全般好きなんですよ。特に『沈黙する艦隊』、もう愛読書ですよ。何度読んでも飽きないんですよね。」
「あー、海自の方は『沈黙する艦隊』なんですね。この前行った北海道の空自基地の人は『C1輸送機が出てくるからって、『ゲート、 自衛隊 彼の地にて、斯く戦った』と『ひそね&まそたん』推してました。」
「あー、わかりますー、それ。やっぱり空自の人は飛行機出るの推すんですねー。」
「電脳研の人は、『ガルパン』の聖地巡礼で大洗まで行ったって言ってました。オレも聖地巡礼してみたいんですけど、この仕事してる限りは厳しそうで・・。」
「『ガルパン』も良いですよね。やっぱり自衛官なんで、自衛隊とか、火器類出てくると絶対見ちゃいますよ。 わたし、聖地巡礼なのかちょっと、ですけど、横須賀駅周辺で『ハイフリ』巡りはしたことあります。横須賀地方隊で研修があった時なんで、仕事で行ったんですけど、研修期間に土日が挟まったんでラッキーでした。」
「おまたせしましたー。」
店長が大きなトレーを持って入ってきた。
「さっきのイカのゲソ天、そんでマテ貝のバター焼き、明太ポテサラ、チップスときびなごフライです。ごゆっくり。」
「生ビールお代わりくださーい。」
「私、『黄金霧島』、ロックでお願いします。」
「うわー、さすが九州女子、基本が焼酎ロックって、ほんとだったんだ。」
「私はたまたま焼酎好きなだけで、それ、ネットのネタですよ。熊本の女子が東京に就職して、歓迎会で可愛いお酒飲まなきゃって思って、イモ焼酎、水割りで、って言ったって話ですよね?」
「そうそう。面白いよねー。いや、絶対ネタだってわかってるけどねー。だって、普通にビールとか飲むでしょ。」
「ただ、焼酎のお湯割り作るときに先に焼酎入れると、九州人が怒り出すって、これはリアルなんですけどね。だって、関西人って先に焼酎入れるんですよ、信じられないですよねー。」
「あ、ほんとにマジネタだったんだ。わたし、その順番気にしたことも無かった。」
「だめです。これ重要です。まず、器を温める、そして、あとから入れた焼酎がお湯の対流でちょうどよく混ざって、香りもたつ、これですよ。あ、力説しちゃいました・・。」
全員でケラケラ笑った。楽しいね、こういうのって。




