第98話 井上さん参戦
続いて、にら豚炒めにいってみよう。豚の脂とにらが良くマッチしてて、おいしいな、これ。
「ニラたま炒めは食べますけど、ニラ豚炒めも美味しいですね。」
「私はニラだとレバニラ炒めを思い浮かべるけど、レバニラはレバーの個性とニラの個性が戦って出来た一品って感じだけど、ニラ豚はニラの個性をも包み込む豚脂って感じだね。」
「飛鳥馬さんって、不思議な所で詩人センス爆発させますよねー。」
「結局、どっちも美味いってことなんだけどね。あはは。」
飛鳥馬さんはにら豚をむしゃむしゃ食べて、残りのビールを飲み干ししてしまった。
「ぷふー。うまいつまみとビール、最高だよね。」
そして、母屋の廊下を歩いているスタッフを見つけて大きく手を振った。
「はい、お呼びですか?」
スタッフがやってきた。
「すみません、生をもうひとつ下さい。」
「あ、わたしも生おかわりお願いしまーす。」
次は、タコときゅうりの酢の物をパクっといってみる。
口の中がにら豚の脂でたっぷりだったのが、酢でリセットされる感じだ。
さっぱりしてめちゃめちゃうまい。タコの歯ごたえも良いぞ。
「タコ、めっちゃうまいですよ。」
「そうだろうね。気になってるんだけど、ビールが無くなっちゃったから、食べられないんだよ。」
あ、なるほど、ビールの到着を待ってるんだね。
「おまちどうさま、生2丁です!」
スタッフがジョッキを持って入ってきた。
飛鳥馬さんはジョッキを持ちあげた。
「よし、これで僕はまた、ちゃんと戦える。僕の戦いを。」
ここでそのセリフですか、飛鳥馬さん。この人、実は相当オタク入ってるよな。
2人の2杯目のビールがなくなりかけたころ、店長がメニューを持って入ってきた。
「何かお持ちしましょっか?」
「そうですね、魚が食べたいですね、お刺身で今日のおすすめって何かありますか?」
「あ、忘れとりました! イカ、生イカ仕入れとうとですわ。まだ、生きてる新鮮なイカ刺、作れますけど、どげんでしょ?」
「わー、すごい。わたし、イカ刺お願いします。」
「私も食べたいですよ。」
「え、オレも食べますよ。」
「じゃ、皆さんでつまめるように、イカ2杯を呼子のイカ風に、身はお造りにして、ゲソは天ぷらにして、持ってきましょか。」
「お願いします。他にも今日のおススメってありますか?」
「後は、マテ貝が入ったんで、バター焼きにしたらうまかとですよ。」
「それも下さい。」
「夕食がとんかつで、魚介は今から持ってくるんで、後は野菜がええかの。明太ポテトサラダとかどげんでしょ?」
「良いですね、それも下さい。」
「はい、イカお造り、マテ貝バター焼きと明太ポテサラ、すぐお持ちしますんで。」
店長が出て行こうと、引き戸を開けると、ちょうど向こうから井上さんが中庭をこちらへ向かってきているところだった。
「こんばんは。本当に来ちゃいました。」
「こんばんはー、どうぞどうぞ。ここどうですか?」
柏木さんが自分の隣の席を勧めた。女子会チーム九州編結成を目論んでいるのか?
「飲み物はどげんします?」
「私も生ビール下さい。」
「今ちょうど、イカのお造りとか頼んだところなんだけど、井上さん、何か注文するものありますかー?」
「そうですね、さつまいもチップスときびなごフライお願いします。」
「生1丁、チップス、きびなごフライ、少々お待ち下さい。」
店長が小走りに母屋へ向かった。
「離れの部屋ってこんな風になってたんですね。私、ここの部屋に入るの初めてなんですけど、雰囲気良いですね。」
「ねー。和風な中庭なのに、中はログハウス風って、まさにちゃんぽん文化って感じよねー。」
「生お待たせしましたー!」
スタッフが生ビールを3つ持ってきた。
「ここ、飲み物のオーダーは先に直ぐ持ってきてくれるんで、嬉しくなっちゃうよねー。さ、乾杯しましょ。飛鳥馬さん、乾杯、乾杯。」
「私? ハイハイ。じゃ、九州2日目お疲れ様と、ようこそ、井上さんってことでカンパーイ!」
「かんぱーい!」
「乾杯!」
「カンパーイ」
「イカお造り、お待たせしました。」
店長が大きな皿を持ってきた。
「うわー、本当に透き通ってるんだ、イカ。」
「これは鮮度が命なんで、先にお造りだけ持ってきました。あとのお料理は後から持ってきますんで、先にお造りどうぞ。」
「これは凄いね。店長、これが出たなら、焼酎飲み比べセットもお願いします。」
「わたしも焼酎飲み比べセットお願いしまーす。」
「はい、焼酎飲み比べセット2丁。今日は、昨日とは違う焼酎で用意しますんで、お楽しみに。」
店長がニヤッと笑って小走りに母屋へ戻っていった。
「店長、酒飲みのツボを押さえてるよね。この基地の人達は良い店があってうらやましいな。」
「岡部店長、実は私達の先輩なんです。海自で護衛艦の給養員だった人で、退職後にここの店長になったんですよ。だから、基地内に知り合いも多くて、自衛官のことが分かってるんで、凄く居心地がいい店なんですよ。」
「そうだったんですか。それは最高の店ですね。あ、だから昨日も急に食堂から夕食運んだりとか、簡単に調整出来たんですね、なるほど。」




