第92話 鶏皮串とぶぶ漬け
「お待たせしました、串焼きでごす。」
店長が皿を持って入って来た。
「うわ、この鶏皮、びっしり詰まってて美味そうですね。豚バラ串もでかくてボリューミーだ。」
「はい、博多は焼き鳥消費量日本一で、一説には焼鳥発祥の地なんて言われてちょりますんで。」
「そうだったんですか。いや、これはまたしても楽しみだ。あ、そうだ、補充しとかないと。今度は『黄金霧島』下さい。」
「わたしは、もう一杯生下さーい。」
「オレはウーロン茶お願いします。」
「はい、『黄金霧島』、生、ウーロン茶。少々お待ちを。」
店長は相変わらず、元気に小走りで母屋へ戻って行った。
「なんか関東で食べる鶏皮串とちょっと違いますね。すっごいみっちり刺さってる感じで、美味しそう。わたしもちょっと食べたいなー。」
「あ、大丈夫。串から外すからみんなでつまもうよ。見た目外がカリッカリに焼けてて、相当期待しちゃってるんだけどね。」
そう言いながら飛鳥馬さんが串から鶏皮を外している。
「全部外しちゃって良いですか?」
「うん、お願い。」
オレは鶏皮と豚バラを外した。
「いっただきまーす。」
柏木さんが鶏皮をほうばった。
「うっわー、外カリッカリで、なかモッチモチだー。」
オレも食べてみよう。
パクっとな。うわ、外パリパリ。なのに、なかはモッチモチ、すげー。
「なんですかこれ。こんな鶏皮串食べたこと無かったですよ。めっちゃ外パリパリなのに、中はしっとりモッチモチですよ。」
飛鳥馬さんも鶏皮を食べてる。
「うん、おもしろいね、これ。皮がパリパリしてて、でも噛むとジュワーっと来るね。なるほど、これが九州の鶏皮串なんだ。良いね、これ。」
店長が飲み物を持って戻って来た。
「はい、『黄金霧島』、生、ウーロン茶、おまちどうさま。さて、そろそろ、お茶漬け用意しましょっか?」
「あ、もうそんな時間でしたか。はい、お願いします。」
飛鳥馬さんが答えると店長は小走りで母屋へ戻って行く。
「これが本日〆の一杯になるってことだね。更に味わって飲まないと。」
「でも、飛鳥馬さん、さっき焼酎買い込んだんですよね?どうせ部屋戻っても、一人二次会じゃないんですかー?」
「まぁ、そうね。ほら、気分的に一応、〆だからね。しかし、九州、食事うまいね、これから1週間楽しみだよ。」
「わたし、この前北海道から戻ったら体重2キロ増えてたんですよー。今回も増えるな絶対に。また、帰ったらインバド参加しないとなー。」
「この基地にもジムとかあるんじゃないですか?」
「うん、多分あるよね。明日聞いてみようか?」
「わたしは、ここにいる間はいかないかなー。決めたの、外に居る間は食事を楽しむ、でプリズンでは体調調整に専念するって。その方がメリハリ出るし。」
「それ、外では思いっきり食べようってことじゃないんですか?」
「違います―。メリハリですー。」
「だって、プリズンでも土鍋買って鍋パーティーしようって言ってたじゃ無いですか。」
「鍋は野菜多いから、カロリーゼロなの!そんなこと言ってると下田くん誘わないよー。それでも良いの?」
「イヤです。鍋はカロリーゼロです。そうでした。はい。」
「ふむ。わかればよろしい。」
「はい、お茶漬けおまたせしました。」
店長が大きなトレーを持って入って来る。
「だし汁かけて、刻み海苔とアラレをかけてあるんで、後はお好みで、辛子明太子、高菜とか乗せたらうまかとですよ。あと、温かいお茶も置いときますんで。」
「ありがとうございます。出汁の香りが良いですね。」
「これは、鰹と昆布の合わせだしなんで、味も香りも、よかでしょ?」
「うわー、美味しい。」
柏木さんがうまみの舞を披露した。
「今夜のお食事、どげんでしたでしょうか?」
「最高ですよ。九州名産を目いっぱい堪能させて頂きました。」
「そうですか。それは良かった。皆さんは九州で料理ったら、何をイメージされるとですか?」
「うーん、九州。辛子明太子、辛子レンコン、博多ラーメン、長崎ちゃんぽん、あ、もつ鍋、とかですかね。」
「わたしも同じだけど、後は、イカかなー。新鮮なイカの刺身ってありますよね?」
「呼子のイカですたいね。なるほど、ラーメンとちゃんぽんは多分、食堂のランチでも出るっしょね。もつ鍋は、うーん、夕食で、出るかどうか。呼子のイカは食堂では絶対に出ませんな。うん、明日、食堂の親方と話してみっしょか。」
店長はブツブツ独り言を言いながら母屋へ戻って行った。
辛子明太子と高菜をたっぷり入れた、出汁茶漬けは、シンプルなのに味わい深くてペロッと食べ終わってしまった。
「お茶漬けなのに、だし汁。で、こっちが本当のお茶、何で出汁かけるのにお茶漬けなんですかね?」
「そうね、それを言ったら、お茶漬けのもとをかけたら、お湯かけるよね?もうお茶漬けじゃなくて、お湯漬けだよね。不思議だねぇ。」
「まぁまぁ、わてら京都では、ぶぶ漬け、言いますなー。」
「柏木さん、なんで急に京都弁なんですか。」




