第83話 勤務場所は
食事を終えるとコーヒーが運ばれてきた。
「こんな豪勢な部屋でコーヒー飲んでるなんて、とっても優雅な気分になるよねー。ここが基地の中だって忘れそうだもん。」
「こういう重厚感って、落ち着くね。プリズンのビルは綺麗だけど、重厚感は無いからね。」
うん、確かに落ち着くよな。
「そうですね。古い建築物って、雰囲気良いんですね。」
「ま、こういう場所は、歴史が感じられる方が良いけどね。ただ古ければ落ちつくって訳でもないから、その辺は建物次第だと思うな。特に水回りとかはやっぱり新しい方が使い勝手も良いしね。」
「うん?もしかして柏木さん、部屋の風呂周りの事が気に入らない感じ?」
柏木さんの微妙な反応に飛鳥馬さんが切り込んだ。
「・・レトロ、雰囲気は良いんだけど、使い勝手は、どうしても今の物の方が便利だしから・・」
「もしかして、官舎が古すぎる件ですか?」
井上さんの手前、口ごもってしまったのであろう柏木さんだったが、やはり井上さんには気づかれてしまったようだ。
柏木さんが返事をしない代わりに井上さんが続けた。
「本来なら皆さんには幹部官舎を使ってもらう予定だったんですけど、上下水道の配管設備にトラブルがあって、急遽改修工事をすることになってしまって、それがまだ終わってないんです。ですので、当初1ヵ月だった滞在予定を1週間に短縮して来ていただくことにしたと聞いています。あの官舎は隊員からも不評ですし。実は建て替えの予定があって、もう、新規の入居者は受け付けていなくて、皆さんが使うのが最後なんですよ。」
「いえいえ、1週間の出張ですし、最後の住人になれるんなら、味わい深く楽しみますよ。私の学生時代のアパートを思い出しますしね。」
飛鳥馬さんが笑ってる。
「群司令も、あの官舎のことは気にされていて、その代わりにせめて食事は楽しんでもらおうと、担当部署に指示を出していたと聞いてます。」
「あ、だから初日のランチから、こんなに九州づくしだったんですね。こんなに美味しいご飯が食べられるなら、わたしはなーんにも問題ないですよー。」
うん、同感。
「オレも楽しみです、九州飯。」
食事の後は、会食用室を出て、管理棟も出た。
「裏の建物に移動しますね。」
管理棟の後ろには、軍司令部、管理棟とは別世界のような、無機質なコンクリート造りの低層のビルがあった。
「こちらの建物が電脳棟です。中には電脳作戦室、電脳研究室、電脳訓練室等が入った電脳系の中枢施設です。」
確かに入口には警備兵が居て、かつ静脈認証の自動ドアが設置させれている。
「みなさんのアクセス権は設定済ですので、認証してお入りください。」
静脈認証機に掌をかざす。
ピピッという音がして自動ドアが開く。
飛鳥馬さん、柏木さんに続いて、オレも掌をかざしてドアを開けて中に入った。
最後に、全員の入館を確認してから井上さんが入って来た。
「さ、訓練室は3階になります。」
井上さんに続いて階段を上る。さっきまでの歴史的建造物とはちがって、中はプリズンと同じような最新設備のビルのようだ。
警備のためなのか、明り取り目的だけの細長い窓しかない廊下を進む。
「ここが訓練室です。」
ドアの横には静脈認証機が付いていて、今度は井上さんが先に入った。
ピピッ。
続いて、飛鳥馬さん、柏木さん、オレが入室する。
部屋の中にはボタン連打測定器、ステコン、各種コントローラーが整然と並べてあって、まさしく訓練室、という感じだ。
が、その一角に雰囲気に不似合いな一人用ソファーが3脚、長テーブルの上にはコーヒーメーカー、ポット、各種ティーバック類が置いてある。
「普段私たちは訓練するだけにしか使わない部屋なのですが、皆さんは終日使われるということでしたので、電脳研に確認して、同じように気分転換できる備品を用意しました。」
「それはお気遣いありがとうございます。私たちは外で一服とか、特に基地の外に出ることが出来ないので、こういう、簡単に気分転換できる空間はとても助かるんですよ。」
「私たちには、基地から出られないことがどれほど負担なことか想像も出来ませんが、せめて滞在中はストレスなく過ごして頂きたいと思ってます。」
「ところで、滞在中は電脳研に居るのと同じ勤務だと聞いているのですが、防戦要請が発令された場合、ここで防戦対応することになりますか?」
「いいえ、防戦対応は電脳作戦室で対応頂きます。いまから作戦室もご案内しますね。」
訓練室を出て、階段を下りた2階の全フロアが作戦室だった。
井上さんに続いて、静脈認証機で認証して入室する。
中は壁一面が3枚の大型モニターになっていて、3つのゲームが映し出されていた。
そして、その壁に向かって席がずらっと並んでいるが、配置を観る限り、3
チームに分かれているようだ。
部屋の後方中央にガラスで囲まれた部屋がある。
「ここが作戦司令室です。今は実戦ではなく、訓練中なので、作戦司令をご紹介させて頂きますね。」




