第78話 通勤時間帯の防戦要請
定時になるまでミーティングが続いた。
「繰り返しになるけど、結局は、来週からの1週間は九州ね。ってことで今日は終了。」
「お疲れ様でした。」
「お疲れ様ー。」
3人でエレベーターホールに居るが、誰も下のボタンを押さない。
「今日はコンビニ行かないんですか?」
柏木さんが飛鳥馬さんを振り返った。
「うん。ビールの買い置きがまだ残ってるし、ほら、また来週から出張なんで、ストック食材使っちゃおうと思ってね。今夜はね、冷やし中華を作る予定なんだ。」
「そう、わたしも。食材使っちゃわないと腐っちゃうしね。わたしは何作ろうかな。」
「オレは麻婆豆腐作りますよ。」
エレベーターの中でも、3人でわちゃわちゃしていた。
部屋に戻る。予定通り、麻婆豆腐を作るので、まずはご飯を研いで炊飯器にセットする。副菜をどうしようか悩んだけど、なんだか面倒になって来たので、麻婆丼にして、沢庵とカップスープで済ませることにした。
麻婆丼、完成。意外とフォトジェニックな感じに出来たので、写真撮って、芦田さんと橋田さん、そして昨日ライン交換した安西さんに、オレの傑作麻婆丼の写真を送った。
そういえばオレ、女子3人とチャットしてるんだな。実感わかないけど、これってもう完璧リア充だよね。そう、オレは既にリア充様なんだよ。
で、麻婆丼とカップスープと沢庵をリビングに並べて、モニターオン、Netfrogs
オン。今日も『コードギアス』の続きを観る。
うーん、さっきリア充だと思ったんだけど、あんまり生活パターンは変わってないんだな。これは、リア充仮免? それとも単なるオレの妄想か??
ふと気が付くと時間は既に深夜0時を過ぎていた。
眠たいわけではないんだけど、このタイミングを逃すとソファーで寝落ちしてしまう危険性がアップするので、食事が終った食器を片づけてベッドに入った。
目が覚める。金曜日の朝だ。今朝もトースト1枚と、目玉焼きで朝食を済ませる。
部屋ではコーヒーを飲まず、研究室へ向かおう。だって、研究室には、今日も違うコーヒーが待ってるはずだからね。
研究室のドアを開ける。あら、まだ真っ暗だった。ちょっとコーヒー飲みたいが強すぎで、早く来過ぎたか 笑
ガチャ。
「おはよう、お、今日も下田君か、最近早いね。」
「おはようございます。いえ、コーヒーが待ちきれなくって・・。」
「あははは、良いねぇ、期待されてるとこっちも嬉しいよ。」
早速飛鳥馬さんはコーヒーメーカーの方へ向かった。
ガチャッ。
「おはよーございますー。」
柏木さんは今日も元気いっぱいだね。
研究室にフルーティーな香りが充満する。
「今日はね、出張前の最後のコーヒーなんで、王道中の王道、ジャマイカのブルーマウンテンにしてみたよ。」
3人でコーヒーを飲む。
「あぁ、ほっとしますねー。今日は一日平和だと良いなー。」
「そうだね、昨日みたいな連戦は勘弁してほしいよね。」
「ほんと、そうで・・・」
オレの答えに被せるように警報が鳴った。
「ブァー、ブァー、ブァー。至急、至急、ネット侵犯発生、第二防衛線が突破された。電脳研究所独立小隊へ防戦要請発令。繰り返す、ネット侵犯発生、第二防衛線が突破された。電脳研究所独立小隊へ防戦要請発令。」
「うわ!朝一から来たか、行こうか。」
エレベータ―ホールで緊急呼び出しボタンを押すとエレベータが直ぐに到着して、ドアが開く。乗り込んで、緊急用作戦室行きのボタンを押す。
作戦室に入るが、水野指令の姿は無いが、モニターには『エスエスコンバット9』が映し出されている。
「諸君、ご苦労様。北海道エリアでの侵犯で相手の数が多くて押されている、対応を僕は今研究所へ向かう車の中だが、オンラインで状況は確認しているので、対応を頼む。」
スピーカーから水野指令の声が流れた。
「了解!」飛鳥馬さんが答えたあと、オレ達の方に振り向く。
「たぶん、通勤時間帯の対応状況の確認だろう。指令不在でも対応が変わらない所をみせつけてやるしかないな。皆、頼むよ。」
「了解!」「了解しました。」
飛鳥馬さんが想定した通り、普段よりも早く作戦室のパトライトが消え、ゲームが強制終了する。
ちょうどそこへ水野指令が入って来た。
「ご苦労さん。C国はまだ、色々とこちらの体制を確認しているようだな。今朝はお台場に向かう複数個所で交通事故があって、その処理でお台場に入れなかったんだ。たぶんこれもC国の仕業だろう。今後は僕もルーチンでの行動は避けて、移動する時間も毎日変えるようにしようと思う。」
オレ達は研究室に戻ったが、折角のブルーマウンテンが冷めてしまっていた。
その後、午前中は何事も無く終わり、3人で食堂へ来た。
飛鳥馬さんは、Aランチの鴨南蛮そば、稲荷ずし、おひたしのセットを、柏木さんはBランチのメンチカツとコロッケの盛合わせ、おひたし、コンソメスープのセットを頼んだ。オレは、ちゃんと予定通り、ピラフセットを頼んだ。これでピラフの神様に怒られることも無いはずだ。




