第77話 ミーティング結果
時計の針が16時を少し過ぎた時、飛鳥馬さんが戻って来た。
「少しミーティングしようか。」
3人がミーティングテーブルに座ると飛鳥馬さんが切りだした。
「えぇと、まず、来週の予定だけど、Aチームは九州エリアの基地に行くことになりました。」
「あら?結局今の体制のまま続けることになったんですか?」
柏木さんが首を傾げる。
「そうね、順を追って説明した方が良いかな。まず、今の仕組みだと、やはり少し体制に不安が残ることは共通認識だったね。でも、そもそも論として、独立小隊は防戦対応が主任務じゃないんだよね。本来防戦は普通科連隊が対応すべき、だよね。私達の任務は、普通科連隊を含めた日本全体の防衛力を上げることであって、それが電脳研究所の目的だからね。独立小隊が活躍できるようにしていくのは本末転倒ってことなんだよ。」
「それは正論だと思うけど、現実的には、わたしたちが最終防衛ラインで、今はそこが危ういんでしょ?それはどうするの?」
「まぁ、そうなんだよね。どんなに理屈が正しくても、やられたら終わりだからね。それで、私はさっき、九州エリアの基地に行くことになった、と言ったと思うんだけど、そこがミソなんだよ。」
「え?」
「先週はトレーニング派遣として、基地の隊員達にトレーニングをしに行ったんだけど、来週からはトレーニング派遣じゃなくって、私達の待機場所と職場である研究室が、各基地に変わるってイメージになるんだ。」
「トレーニングはしないってこと?」
「トレーニングは、私達が普段トレーニングしているタイミングで、基地のメンバーにも指導するんだよ。それで、防戦要請があれば、今と同様に、そちらが優先されるんだ。だから、今の住まいと職場が基地に変わって、トレーニング中には、基地のメンバーへの指導が増えるってことかな? ほら、そうすれば、チーム分けしたことによる対応力の変化は無くなるよね?」
「なるほど、わからないではないけど、毎週住む場所が変わるって、ちょっと落ち着かない感じもするけどな。」
「そう、そこは私も進言したんだよね。で、最終的には1ヵ月の単位で移動するようになったんだ。ただ、私たちを受け入れる基地側でも準備が必要なんで、来週は、とりあえず、トレーニング派遣と同じスケジュールで実施するってことになったんだ。」
「1ヵ月単位ね、なるほど、その方がまだ落ち着くわね。どうせ、わたしたちはプリズンに居ても、このビルから出ないんだから、それが場所がどこであろうと同じっちゃ同じだしね。」
「ま、そういうことだよ。もう少し色々と変更になるかと思ってたんだけど、案外とまともな方向に進んだ感じだよね。」
「細かいことだけど、基本は、プリズンがわたしたちの居住地ってことは変わらないのかしら?それとも、全ての荷物を持って、ヤドカリみたいに、毎月転々とするのかしら?」
「基本は研究所がベースのままだよ。荷物も部屋もそのままで、あくまでも、長期出張だね。」
「はーい、了解。わたしは特に意義ありませーん。」
「オレも特に何もありません。普段の通りで、場所が変わるってことですよね?」
「そう。それにちょっと、基地メンバーへのトレーニングが増える位かな。まぁ、トレーニングに関しては、トレーニングそのものより、私達の実際の対応を生で見て感じてもらうっていうことが主眼らしいけどね。」
「とにかく、来週は九州ってことよね。九州と言えば・・」
「焼酎だよ。」
「明太子でしょ、からすみでしょ、あとはねー、辛子レンコン。基地の食堂でも鉄鍋餃子とか博多ラーメンとか食べられるのかな?」
「食堂は微妙だけど、基地の隊員クラブ行けば食べられるんじゃないかな。」
この2人、見事に息があった酒豪族だよな。とは言え、オレも九州初めてなんで、ちょっと楽しみなんだけどね。本場の博多ラーメン、期待しちゃうな。
「あとね、トレーニングなんだけど、私達がいつもの通りトレーニングしてるだけだと、基地メンバーへのトレーニングを別に考えないといけなくなるでしょ。だから、自分達もトレーニングが出来て、基地のメンバーも一緒にトレーニングできるみたいな方法が無いか考えてるんだけど、なんか良いアイデア無いかな?」
「うーん、基礎練習以外は、模擬戦形式でペアとかチーム組んで練習するっていうのは?」
「それも考えたんだけど、模擬戦もレベルが違う過ぎると訓練にならなくなっちゃうしね、どうしたもんかな、って思ってるんだ。」
「オレは皆の動きを見て、色々と真似て来たんで、見るだけでも勉強になると思いますよ。」
「そう? それならそうしてみようか。ほら、私は元々eゲームのプロだったんで、正直、研究所で学んだことが無いんで分かってないんだよね。」
「そりゃそうでしょ。この世界線で元eゲーマーの飛鳥馬さんに指導できる人が居るわけないし、飛鳥馬さんは特別だから、参考になりませんー。」
柏木さんが飛鳥馬さんに軽くベロを出した。
「それもそうだけど、なんかちょっと、つまらないんだよね・・」




