第72話 イエーガー
「お待たせしましたー。」
2名のスタッフが飲み物を運んできた。
みんなに飲み物が渡ったところで島津部長が立ち上がった。
「定例のインバドミーティングですが、今日はスペシャルゲストが来てますので、いつもよりも盛り上がって行きましょう! じゃ、挨拶もスカートも短い方が良いって言ってしまうとセクハラになってしまうので、言いませんが、これで挨拶終わり! カンパーイ!」
「いや、今言ったぞー!」
「カンパーイ」
笑いと乾杯が混ざった、いきなり全開で盛り上がる乾杯だ。
スタートダッシュが凄いミーティングっていうか、飲み会だな、ここ。
オレは飲まないんで、生ビールを楽しむこともなく、つまみに箸をつける。
オードブルは、唐揚げ、フライドポテト、ポテサラ、枝豆、ハム、チーズ。飲み会定番メニューみたいな組み合わせだな。ま、飲み会だから当然か。
オレが取り皿につまみを取っていると、岸本さんが声をかけてくれた。
「これは、とりあえずの前菜なので、食べたいものは各自注文してくださいね。特に食事される方は自分で注文しないと、これじゃ食事にならないですからね。」
「あ、はい、わかりました。」
なるほど、じゃ、ご飯ものを頼むかな。いや、流石にここで定食とかかつ丼ってのも雰囲気違うよな。なにか食事になるものは、と。そうか、ピザが良いか。
スタッフが来たのでピザを頼んだ。当然のように、主豪族を含むペース早い組は追加の生ビールを頼んでいる。
「下田さんは、アルコールはNGなんですか?」
島津部長が聞いてきた。
「あ、オレ、未成年なんで、法律的にもNGなんです。」
「え?下田さんって未成年なんですか!? 独立小隊にそんな若い人が居たとは。 まぁ、それじゃ確かに飲めないですよね。」
「でも、こういう雰囲気好きなんで楽しいですよ。酔っぱらいの相手は飛鳥馬さんと柏木さんで慣れたので。」
「はぁ?」
「うん?」
あ、2人に聞かれてた・・。
「飛鳥馬さんと、柏木さんって酔っぱらうほど飲むことがあるんですか? なんか独立小隊の人達って、クールなイメージがあって、ちょっと想像つかないですね。 でも、お酒好きな方だと親近感湧きますね。 実は僕、ここにドイツのイエーガーマイスターをキープしてもらってるんですよ。」
「え?食堂ってボトルキープも出来たんですか?」
飛鳥馬さんが喰いついた。
「あ、いえ、普通はやってないです。僕が店長に頼み込んで、こっそりおかせてもらってるだけなんですけどね。」
「あ、なるほど。でも、なんでイエーガーマイスターなんですか?」
「僕、昔ドイツの日本大使館に赴任してた時期があって、その時にイエーガーマイスターにすっかりはまっちゃったんですよ。最初はなんだこりゃ、と思ってたんですけど、あの変な癖にすっかりはまっちゃって。」
「ドイツのイエーガーマイスター? わたし飲んだこと無いー。」
柏木さん、酒の話題は絶対聞き漏らさないよね。
「ドイツの養命酒っていわれてる薬草酒みたいなリキュールだよ。独特な味わいがするんで好き嫌い分かれるんじゃないかな。でも、最近はアメリカとかでも人気があるって聞いたことあるな。」
流石飛鳥馬さん、酒ウィキペディア。
「えー、それ飲んでみたいなー。」
「私も久しぶりに飲みたいな。」
「そうですか?では、出してもらいましょうか。このミーティングで、飲むの僕だけなんで、いつもは一人でちびちび飲んでるんですよ。」
島津部長がスタッフを呼んでお願いしてる。
「僕のイエーガー、あの緑の瓶のお酒、出してもらえるかな? あと、氷とグラス3つもお願いね。」
スタッフが確かに緑の瓶と、アイスペールとグラスを持ってきた。
確かに、緑の瓶だけど、なんだかRPGに出てくる薬瓶みたいだな。
「これ、ドラクエとかに出ている薬瓶みたいですよね?」
「確かに、回復魔法とか入ってそうよね。」
「ドラクエって何ですか?」
柏木さんに続いて岸本さんが聞いて来た。
あ、この世界にはゲームはあるけど、RPG系のゲームは無いんだった・・。
「うん? なんか昔あったあんまり有名じゃないマンガの話。下田くん、オタクだから、古いマイナーなマンガとかアニメもよく見るみたい。」
「へぇ、そこでこんな感じの回復魔法の薬が出るんですね。そう言われれば魔法の薬瓶みたいなデザインですよね、これ。」
柏木さんが見事にフォローしてくれた。ふわぁ、助かったぞ。
「僕は氷入れてロックで飲むのが好きなんですけど、どうします?」
「私もロックで。」
「わたしもロックが良いです。」
3人が回復魔法薬をグラスに注いだ。
「じゃ、イエーガーに乾杯!」
「うわぁ、これはクセありますねー。薬草酒だわー。」
「うん、久しぶりに飲んだな。」
「学生の時、ドイツに行ってて、基本はビール飲んでたんですけど、ホームステイ先の親父さんがイエーガーが好きだったんで、家ではイエーガー飲んでたんですよ。いやぁ、懐かしいな。」
「僕もドイツ駐在時代のドイツ人の同僚がこれが好きで、そいつと飲むときはいつもこれだったんで、そのうち、僕もこればっかり飲むようになっちゃったんですよ。」
飛鳥馬さんの酒の話題の時の目のキラキラは相変わらずだ。




