第68話 ゴリゴリゴリ
コンコン。診療室のドアがノックされる。
「はい、開いてます、どうぞ。」
ガチャ。白衣の大柄のガッシリした体形の男性が入って来た。
「あ、伊崎さん、ご苦労様。」
「どうも、岸本さん、お待たせしました。」
なるほど、ショートヘアの看護師さんは岸本さんって言うんだな。
「こちらです、お願いします。昨夜寝違えてしまって、身体がガチガチになってしまったそうなんです。」
「どうも、初めまして、医学療法士の伊崎と言います。まずは、うつぶせになって貰えますか?」
「はい、よろしくお願いします。」
オレは診療室のベッドの上でうつぶせになる。
「じゃ、ちょっと失礼しますね。」
伊崎さんの手がオレの肩を押す。あ痛たたたたた・・・。
「あぁ、かなり固まっちゃってますね。これだと最初は少し痛いかもですけど、今筋肉をほぐしとかないと、後でもっと痛くなっちゃうんで、ちょっとだけ我慢してて下さいね。」
ムギー。伊崎さんの指がオレの肩に刺さったんじゃないかと思う位痛い。
「肩甲骨周りの筋肉のコリを取って動きを良くしますね。」
うぐっ・・・。
「続いて、筋を伸ばしましょう。ハイ。引っ張りますよ。」
両手が引っ張られる。
うぐっ・・・。
「もう一度ほぐしますよ。」ゴリゴリゴリ。
ムグググ・・。
「はい、筋を伸ばします。今度は肘をこんな風に曲げてください。」
うぐぅ・・。
「首はあまり強くできなんで、ツボを軽く押すだけにしますね。」
あ、これは気持ちが良いぞ。
結局、8割位の時間は、ゴリゴリと筋肉をほぐされたり、筋を延ばされてで、声を我慢するのが精いっぱいのマッサージが続いた。
「はい、これで今日の施術は終わりです。お疲れ様でした。あとは、湯船にゆっくり浸かると全身の血行が良くなって、更に身体か軽く感じるようになるので、お勧めですよ。では私はこれで。」
伊崎さんが帰って行った。
「下田さん?どうですか?大丈夫ですか?」
岸本さんがベッドの脇まで来て、オレの顔を見ている。
「あ、大丈夫です。けど、なんだか更に身体が痛くなったような気がします・・。」
「ふふふ。整体なんで、そんな感じなんですよ。立ち上げれますか?」
岸本さんがオレの手を引いて立ち上がらせてくれた。
あれ?さっきまでの身体のバッキバキが無くなってるぞ。
「あ、身体が楽になってます。」
「そうですか。良かったです。伊崎さんはJリーグ選手の整体も担当されてるゴッドハンド医学療法士なんですよ。」
「そうだったんですか。そんな凄い人でも診療に来てくれるんですね。」
「もちろん、普通は来てくれないですよ。」
「え?」
「え?って、独立小隊の皆さんは最優先対応事項ですよね?」
「あ、そういうことですか。何だか申し訳ないです・・。」
「何を仰ってるんですか?皆さんが国防の切り札で、研究所は皆さんをバックアップするための機関ですよ?」
「はぁ。そうかもしれないですけど・・。でも本当に身体が楽になりました。ありがとうございました。あ、そういえば、マッサージ代を払ってないんですけど。」
「あぁ、1時間3000円です。研究所と彼の所属しているジムは提携しているので、月末にまとめて精算するんです。下田さんからは、次回の給与から天引きされますので、現金での支配は要らないんです。」
「あ、なるほど、手ぶらで施術受けられるんですね。便利かも。」
「はい、いつでも気軽にお越し下さいね。あ、あと、明日は水曜日なんで、夜はバドミントンありますからね。」
「あ、はい。ありがとうございました。失礼します。」
診療室を出ると、ちょうど20時になったところだった。 晩飯もデザートも食べたんで、コンビニにも寄らずに部屋に帰るかな。
部屋に戻った。身体がすっきりしたからか、逆になんとなく部屋の中がすっきりしてない感じがした。そうだよな、北海道から戻ってから、疲れてて掃除してないんだもんな。身体も軽くなったことだし、軽く掃除するか。
昨日使わなかったベッドを整えて、グダグダになってるソファーを動かして床を掃除した。お湯しか沸かしてないキッチンも一応、掃除しておこう。よし、気分も爽快だ。じゃ、早速Netfrogs、と。あ、今日は寝落ちしないぞ。
今夜は何を観るかな。気分的には、気楽に見られて、軽く笑える感じのアニメだな。そして、新作じゃなく、構えずに見られる昔見た作品が良いかな。うーん、そうだ、今夜は『機動戦艦ナデシカ』にしよう。
ウーロン茶を用意して、『ナデシカ』開始。
なんとなく、眠気がやってきた。ふと時計を見ると、23時を少し過ぎている。
うん、今日はこの位にするか。ここで無理してアニメ見続けちゃうと、昨日みたいに寝落ちしちゃんだよ。今夜はちゃんとベッドに入って、ゆっくり就寝するんだ。
翌朝、スマホのアラームより前に目が覚めた。身体は軽いし、ちゃんと寝たし、うん、快調だ。
調子が良いので、トーストの他に、目玉焼きも作ってしまった。もちろん、目玉焼きには醤油をかける。これ絶対。




