第66話 幕の内弁当
食堂に入るとスタッフが声をかけてきた。
「お疲れ様です。予約は奥の席で準備しておきました。今お料理出しますね。」
席に着くと、飛鳥馬さんが麦茶を一気に飲み干した。
「ふー。連戦はやっぱりキツイね。緊張で喉がカラカラになっちゃったよ。今度、作戦室でも飲みものを用意してもらえるように話をしてみるかな。今回は2連戦だからなんとかなったけど、万一、これ以上連戦対応があったら、対応中の水分補給も想定しておかないといけないよね。」
「わたし、2連戦だけでも、もうここの筋がガチガチに固まっちゃって痛いんだけど、これで、さらに連戦ってなったら、対応できるか自身ないわ。」
柏木さんは右手を左手で揉みながら言った。
「そうだね、この2チーム体制は見直しが必要かもしれないね。明日にでも、太田総務部長とも話をしてみようか。」
そこへ食堂のスタッフが来た。
「お待たせしました。幕の内弁当、サイコロステーキバージョンです。」
「お、水野作戦司令、サイコロステーキとは、かなり奮発してくれてるね。」
「うゎー、美味しそう。」
最高の味付けである空腹が既にマックスな状態なのに、そこに肉が焼ける香ばしい香りが加わって、もう制御不能なほどの食欲が襲ってくるぞ。
「これは、うまそうだ。いただきます!」
肉をひとかけら持って口へ運ぶ。サイコロステーキが放つ熱さで、口の中に自然と唾液が出てくる。パクっ、口に入れる。肉の香りとバターとガーリックがブワーっと口全体に広がった。これは堪らないな。
3人とも無口で黙々と食べ続けている。
そりゃ、昼抜きで目の前に熱々のサイコロステーキを出されたら誰でもこうなるよね。そして、サイコロステーキの他には、絶妙な塩加減の塩じゃけ、エビフライ、ポテサラ、きんぴらごぼう、漬物。洋風メインの幕の内弁当だ。
「ふぅー。一気に食べちゃった。おいしいね、これ。」
「うん、美味いね。でも、幕の内弁当のサイコロステーキ版なんてメニューに無いよね?」
「確か、幕の内弁当はハンバーグだったよね。なるほど、こういうオーダーも出来るんだ。水野作戦司令も粋なことしてくれるよね。」
うん、確かに美味かった。やっぱり肉だよ、肉しか勝たん。肉だ肉、肉持ってこーい!ってワンピーズのルフィーが言うのも解るよね。
一昨日、昨日とカップ麺の晩飯が続いてたんで、ちょうど良い感じに、ガッツリと美味くて栄養満点な食事がとれたな。これは、ある意味、変な時間にネット侵犯してくれたC国さまさまってことか?
「さて、と。早めの夕食も終わったんで、私は下で買い物して部屋へ戻るよ。」
「下で買い物って、ビール買うんですよね?」
「あ、さすが柏木さん、読んでるね。」
「このメニューだったら、ビールですからね。」
「そうそう。もうね、我慢出来ないんだよね。フフフ。じゃ、お疲れ。」
飛鳥馬さんは一目散に食堂を出て行った。
「わたしはね、もうちょっと余韻を楽しみたいのよ。これにね、デザートをつければ、もう無敵夕食ナンバーワンになるからね。ってことで、オーダーしてこようっと。」
柏木さんはそう言うと、食堂の食券売場へ歩いて行ってしまった。
部屋に戻っても、特に用事も無いし、柏木さんの言う通り、ここでデザートをつけたら無敵だな、って、何がどういう風に無敵なのかは良く解らないけど・・。
よし、オレもなんか頼もうっと。
食券売場で柏木さんの後ろに並んだ。
「イチゴパフェお願いします。」
柏木さんはイチゴパフェか。オレはもっと軽いデザートが良いかな。あ、これが良いかな。
「プリンサンデー下さい。あ、コーヒーセットにします。」
オレと柏木さんで席に座ってデザートが出てくるのを待っている。
「昨日の夜、晩飯食べながらアニメ見てたら、そのまま寝落ちしちゃってて、朝までソファで寝ちゃってたんですよ。で、全身バッキバキになってて痛いんですよね。」
「あー、あるよねー。ソファって気持ちいいんだけど、寝ちゃうと首とか寝違えたみたいになるし、腰とかも痛くなるんだよねー。」
「そうなんですよ。まだ痛いですよ。」
「じゃ、マッサージしたら?」
「え?どこでですか? 研究室のマッサージチェアですか? それ、今朝使ってましたよ。」
「違う違う。マッサージって言うか、スポーツ整体だけど、診療室で、整体師呼んでもらって施術してもらえるんだよ。確か20時までだったかな?」
「そうなんですか? 知らなかったです。今日はまだ時間早いんで、この後行ってみます。」
「施術は有料で、確か1時間2~3000円位だったけど、その価値はあるよ。やっぱりプロの施術はうまいよ。」
「お待たせしました。」
イチゴパフェとプリンサンデーが届いた。
「うふふふ。豪華幕の内弁当にイチゴパフェ。今日は良い日だわー。」
柏木さんがパフェの一番上に乗っていたイチゴを食べた。
「んんんー。イチゴ甘い~。」
柏木さんって、ホントに幸せそうな表情で食事をするんだよね。なんだか見てるこっちも幸せになってくるよね。




