第65話 2連戦
作戦室に入る。
「水野作戦司令!到着しました。A班、防戦対応に入ります。」
「ご苦労。今日は『エスエスコンバット9』だ。ただ、敵の数が多くて、普通科連隊が押されてる。よろしく頼む。」
今回はブリーフィング無しで、3人ともに直ぐに席に座って、コントローラーを握って対応開始だ。
敵の得点が普段よりも早くあがってく気がする。こちらが押されているぞ。
「飛鳥馬3尉、大丈夫か? Bチームへ応援要請するか?」
水野作戦司令が立ち上がった。
「いえ、もう少しだけ待ってください。柏木さん!下田君!もう一押しだ、押し戻してくれ!」
「了解!」
「了解!」
約1時間後、作戦室のパトライトが消え、同時にゲームが強制終了した。
「よし、終了だ。よく持ちこたえてくれた、お疲れさま!」
水野作戦司令の声が響いた。
「敵の得点の上がり方が早くなってますね。」
「そうだな、この件は情報本部へも報告しておこう。向こうさんに何か動きがあったのかもしれないからな。」
水野作戦司令と飛鳥馬さんで軽いブリーフィングを済ませた。
3人が作戦室のドアを出た瞬間だった。
「ブァー、ブァー、ブァー。至急、至急、ネット侵犯発生、第二防衛線が突破された。電脳研究所独立小隊へ防戦要請発令。繰り返す、ネット侵犯発生、第二防衛線が突破された。電脳研究所独立小隊へ防戦要請発令。」
水野作戦司令も電話しながら、手でこちらへ来いという合図をしている。
受話器を置くと、ブリーフィングが始まった。
「九州地区に続いて、沖縄エリアでネット侵犯だ。さっきまで対応していた九州地区の敵が、撤退後そのまま沖縄エリアに移動して参戦した可能性もある。とつぜん得点の上がり方が増えたそうだ。ゲームは『グランドツーリング』、なぜか8ではなく、6だ。よろしく頼むぞ。」
3人はスタッフがハンコンをセットしてくれた席につく。
「Aチーム、防戦開始! 昼飯の恨み、ぶつけてやってくれ!」
「了解!」
「了解!」
飛鳥馬さんが珍しく、少し感情がこもった指示を出した。
うん、飛鳥馬さん、柏木さんから強いオーラを感じるぞ。食い物の恨みは怖いっていうけど、ほんとうだね。オレも全集中ハンコンの呼吸でGTRをグリップ走行の限界値でコントロールし続ける。
流石に2連荘での全力対応はキツイな、精神的にもそろそろ限界だ、と思ったその時、作戦室のパトライトが消え、同時にゲームが強制終了した。
「よしっ、終了だ。お疲れ!」
水野作戦司令の声が響いた。
「ふぅ、連戦での対応はキツイですね。」
「はぁぁ。もう肩から先がガッチガチになっちゃった。」
飛鳥馬さんも柏木さんも相当きてるみたいだな、あの強い圧で2連戦だもんな。
「先週から、ネット侵犯のパターンが変わって、なんというか、こちらの出方を試してるような動きをしてるんだよな。先週は同時多発型、今日は連戦。こちらの体制変更を知っていて、対応力を試してるような気がしてならないんだ。」
「チームを分けた運用を知られたってことですか?どこからそんな情報が?」
水野作戦司令と飛鳥馬さんが軽いブリーフィングを始めた。
「もちろん、チーム編成も含めて独立小隊に関しては非公開情報ではあるが、極秘情報扱いではないので、きっちり監視していればある程度は想像できるだろうね。逆に、だから試しているのかもしれないが。」
「それは、研究所内に情報提供者が居るっていう意味ですか?」
「いや、そうじゃなくても、この施設の出入りを監視して、それを追跡していけば、ある程度は分かるだろうな。もちろん、研究所から情報が洩れていることも完全に否定は出来ないがね。ま、いずれにしても、完璧に応戦していれば、体制がどうであろうが関係ない話なので、向こうさんの興味もなくなるだろうけどね。」
「それはそうですね。知りたいのは体制ではなくて、防衛力でしょうからね。」
「そういうことだね。全ては君達の双肩にかかってるってことだよ。」
と言いながら、水野作戦司令が飛鳥馬さんの肩をバンバンと叩いた。
「さて、今日は昼飯抜きで連戦での対応、ご苦労でした。もう時間も16時少し前なんで、今日は勤務終了としてもらって結構だ。そして、食堂に早めの晩飯と遅い昼飯を兼ねた食事を準備してもらってあるんで、食べて行ってくれたまえ。」
「うわー、水野作戦司令がごちそうしてくれるんですか? ありがとうございまーす!」
「まぁ、僕には、こんなことくらいしか出来ないんからね。みんな、お疲れさん。」
「お気遣いありがとうございます、お疲れ様でした。」
「ありがとうございまーす!」
「ありがとうございます、お疲れ様でした。」
3人で作戦室のドアを出た。
飛鳥馬さんがそこで立ち止まって、ドアが閉まるのを見ていた。
「もう警報は鳴るなよ。」
ドアが閉まった。
「よし。終わり。じゃ、行こうか。」
「あー、お腹空いたしー。」
オレも緊張が解けたら急に空腹に襲われて、身体がバッキバキだったことを思い出してしまった。




