第64話 寝落ちからのコーヒー
昼休憩が遅かったせいで、午後の訓練は直ぐに定時を迎えた。
3人で研究室を出てエレベーターホールへ向かい、エレベータの呼び出しボタン『上』を押した。
まだ身体が通常勤務に慣れてないからなのか、ちょっと疲れてたので、夕食は自炊せずにコンビニでなにか買って済ませようと思う。
「お疲れ様でした。オレ、コンビニ行くんで下行きます。」
オレはエレベーターの『下』ボタンを押した。
「あ、私もコンビニ行くかな。」
「じゃ、わたしは帰りますねー。おつかれさまー。」
柏木さんは一人で上に上がるエレベーターに乗って帰って行った。
下りのエレベーターも来たので、オレと飛鳥馬さんが乗り込む。
「久々の訓練と防戦要請だったんで、なんだか疲れちゃったんですよね。もう飯作るのも面倒なんで、コンビニで買って、早めに寝ます。」
「あ、下田君も? 私も疲れちゃったんで、コンビニ飯にしようと思ってたんだよ。ご飯の支度も結構手間だからね。」
あ、飛鳥馬さんも疲れてたんだ。
コンビニに入ると、オレは考えるのも億劫だったんで、カゴも持たずに、でかみそカップ麺とオニギリを手に持って、レジへ行き、からあげちゃんを注文した。
ふと、飲みものコーナーを見ると、飛鳥馬さんが缶酎ハイを真剣に選んでる姿が見えた。 飛鳥馬さんは疲れててもとりあえずは飲むんだね。こういう時に絶対ぶれない飛鳥馬さんは素敵だわ。
部屋に戻り、ポットでお湯を準備しつつ、パジャマに着替えて、スマホのメッセージを見る。今日も芦田さんと橋田さんからメッセージが来てた。
「今日は菜々美の買い物に付き合わされてた。最近狙ってる男子がゴスロリ好きだからって、ゴスロリ風のトップス買ったんだけど、意外と可愛いんだよねー。私も買おうかな。」
「お弁当作って、アリエスと少し遠出してきました。帰りに少しだけ雨に降られたけど、リフレッシュできましたよ。」
うーん、見事にキャラが違うよね。ふと、さっきの柏木さんの『みんな違ってみんな良い』を思い出してしまった。
「えー、ゴスロリ芦田さん? 買ったら、写真見せてね。」
「良いですね。今度行ったら、オレも、もっと乗れるように練習しなきゃですね。」
当たり障りのない返信しか出来ないオレも、これはこれで、『みんな違ってみんな良い』なんだよ、と一人で納得しておく。
リビングのモニターをつけて、Netfrogsにつなぎ、でかみそカップにお湯を注ぐ。
うん?昨日の夜もカップ麺だったんだな。先週までの食材の宝庫北海道から一気にいカップ麺連荘ってのはちょっとな。明日は何かちゃんと作って食べよう。
さてと、今日は何を観るかな。昨日は結局『ゲート』を全話見続けちゃったんで、『薬瓶のひとりごと』の続きを制覇するか。
ズルズルズルーっ。 うん、やっぱり、でかみそカップは美味いよな。
ふと気が付くと、そこはソファの上だった。そうか、『薬瓶のひとりごと』を見ながら寝落ちしちゃったんだな。今は何時?あ、もう6時過ぎだよ。寝落ちしたまま朝まで寝ちゃうなんて、やっぱり疲れてたんだろうな。
寝る時間はしっかりとれたようだけど、中途半端な格好で寝てしまったので、身体がバキバキしてるぞ・・。とりあえず、シャワー浴びて、顔洗って飯食って仕事行かなきゃ。
結局昨日食べなかったオニギリを朝飯にして、研究室へ入った。
「おはようございます。」
「おはよう。」
飛鳥馬さんがコーヒーの準備をしていた。
「ちょうど淹れたてだけど飲む?」
「あ、頂きます。」
うん?いつもと香りが違うような?
「あれ?いつものコーヒーと違うような気がします。」
「あぁ、これ、私が買った豆なんだよ。これはね、インドネシアのマンデリンコーヒー。少し苦みが強めだけど、風味がハーブっぽいおもしろい感じでしょ?」
「オレ、これ好きです。」
「そう、よかった。昨日、頼んでた豆が届いたばっかりなんで、直ぐに試してみたかったんで、持ってきちゃたんだよね。」
飛鳥馬さんは、コーヒーにもこだわりがあるんだな。
「おはよーございまーす! わぁ、良い香りー。」
柏木さんだ。
「おはよう、柏木さん。この前話したマンデリンが届いたんで淹れてみたんだけど、飲む?」
「わー、もう届いたんですか? 飲む飲む!」
柏木さんがマイマグカップを持ってコーヒーメーカーの所へやってきた。
「ふんふん、良い香りするー。」
早速口をつける。
「わー、風味が良いですねー、わたし、これも好きー。」
「そう? あ、面白いから、これから毎日色々持って来るんで、皆で試してみようか。」
「良いですね。」
「賛成ー。」
ランチタイムまで秒読み、というタイミングだった。
「ブァー、ブァー、ブァー。至急、至急、ネット侵犯発生、第二防衛線が突破された。電脳研究所独立小隊へ防戦要請発令。繰り返す、ネット侵犯発生、第二防衛線が突破された。電脳研究所独立小隊へ防戦要請発令。」
3人でエレベータに乗り込むと、飛鳥馬さんがオレ達に振り向いた。
「また昼飯ブロックされたね、ちょっとムカつくんでガッツリやってやろうか。」




