第60話 帰路
機体は滑走路に入り、端まで進んでUターンして止まった。
「離陸します。」
こういう機でも機長アナウンスがあるんだ。
クォォォォ、エンジン音が大きくなり、機体がビリビリと振動する。この離陸前のエンジン全開状態って、ネコが獲物に飛び掛かる直前の、耳ペタンとして、おしりフリフリ、尻尾がピョンピョンしている状態をイメージしちゃうんだよね。
ブレーキが解除された。
身体がぐぅっと席に押し付けられる。おー、結構なGがかかるんだ。滑走路の半分位の所で、ふわっと離陸した。そのまま一直線に雲の上まで上昇していく。
雲の下に緑の大地が見える。さようなら、北海道。また来たいな。
U4は徐々に高度を下げはじめ、眼下には街が見えて来た。さっきまでの緑の大地とは全く違う、人口の森のようだ。帰って来たんだな。
景色は、人口の森からビルの森へ変わっていく。もう東京だね。
「ファイナルアプローチに入ります。」
機長アナウンスがあった。
機体は、長い滑走路に滑らかに着陸すると、格納庫の方へ向かって行った。
機体が止まって、エンジンが停止した。少ししてドアが開くと空自の制服姿の隊員が機内に入って来た。
「お疲れ様でした。ヘリの準備が出来てますので、ご案内します。」
U4のタラップを降りると、少し先にヘリが止まってるけど、ずいぶん小さいヘリだな。
「救難ヘリですので、少し狭いですが、後列に3名でお願いします。」
プリズンから北海道へ行った時と同じヘルメットが渡された。
飛鳥馬さんは、真ん中に座りたいっていうことで、オレが奥の窓際、飛鳥馬さん真ん中、柏木さんが手前の窓側の配置で座った。
「飛鳥馬さん、真ん中、座り辛くないですか? 変わりますよ?」
「いやいや、前とパイロット席が見たいんで、ここが良いんだよね。どうせ、距離少ししかないから、乗ってる時間なんて、ほんのわずかだしね。」
あぁ、なるほど。飛鳥馬さんって、少しミリオタ入ってるんだったな。
ヘルメットのレシーバーから機長の声が届く。
「離陸します。」
ぶゎぁぁぁっとエンジン音が大きくなると、機体がすっと浮き上がった。
ヘリに乗るのはこれで2回目だけど、これ不思議な感覚だよな。
「あ、渋谷!」
柏木さんは窓の外の景色を楽しんでる。
それに引き換え、飛鳥馬さんは外には目もくれず、席から身を乗り出してパイロット席を見ている。
「レインボーブリッジ! あー、もうお台場だ。」
柏木さんの方からはレインボーブリッジが見えるんんだ。オレの方からは東京の街並みしか見えないぞ。
ヘリがホバリングを開始すると、ゆっくりと降下を始めた。
「着陸します。」
機長のアナウンス?があった。
軽いショックを感じ、機体が少しバウンドした。着陸したみたいだね。
ふゅーん。。エンジン音が小さくなっていく。
パイロットが合図をすると整備員がヘリに近づいて来て、ドアを開けた。
「お疲れ様でした。足元に気をつけて降りて下さいね。あ、ヘルメットもお預かりします。」
ヘリを降りると、林さんが出迎えてくれた。
「飛鳥馬さん、柏木さん、下田さん、お帰りなさい。北海道はどうでしたか?」
「ただいま戻りました。一言で言うと食べ過ぎました。」
「え?飲み過ぎました、でしょ?」
柏木さんが突っ込む。
「いずれにしても、かなりエンジョイされたみたいですし、無事に戻られたので良かったです。太田総務部長が心配してたので、部屋へ戻る前に総務へ寄って頂けますか?」
「今、行きますよ。皆も良いよね?」
林さんと3人で総務の部屋へ入った。太田部長は何やら資料を読んでいるようだ。
「ただいま戻りました。」
飛鳥馬さん、柏木さん、オレが並んで挨拶をする。
「おー、お帰り。向こうの基地司令からお礼のメールが来てるんだよ、相当盛り上がったんだっけ?」
「歓迎BBQ大会もやってもらいましたし、トレーニング自体も、皆真剣に受けてくれたんで、相当意義があったと思います。」
「そうか、聞く話では諸君も相当リフレッシュできたみたいだしな。来週はB班が北海道の陸自基地にトレーニングに行くので、ここの守りはA班に任せたよ。では、疲れただろうから、まずは部屋に戻ってゆっくりしてくれたまえ。」
「了解です。ありがとうございます。」
3人はエレベーターで宿舎フロアの35階へあがった。
「じゃ、おつかれ。また、月曜、よろしくね。」
「お疲れさまー。」
「お疲れ様でした。」
エレベーターの前で、別れた。
部屋に戻ると、なんだか疲れがどっと出てきて、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、着替えもせずにソファでゴロっと横になってしまった。
身体を動かしたのは、乗馬位なのに、身体が重く感じる。1週間、まぁ、正確には6日間だったけど、オレは今までこんなに長く旅行したことないから、色々と疲れたんだろうな。なんて、考えていたら、いつの間にか寝てしまったいたようだ。
気づけば、16時。昼も食べずに3時間以上寝ちゃってたんだな。スマホには着信メッセージが表示されている。




