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第48話 馬、乗れたよ

 沢田さんが黒毛の馬の脇にプラスチックの箱を置いた。

「では、次はリブラに乗りますか。どちらが先に乗られます?」


「あ、飛鳥馬さんどうぞ。」

「そう?じゃ、お先に。」


「それではこの箱の上に立って、そこから自転車にまたがるイメージで馬に乗ってくださいな。」

飛鳥馬さんが箱に片足をかけたところで、動きが止まった。

「あれ?この箱って一升瓶ケースですか?」

「ビール瓶のケースだとちょっと低くいんで、これがちょうどいいんですわ。」

「なるほど。ちなみに、ここに書かれてる丹沙汰って、酒蔵の名前ですよね?なんて読むんですか?」

「ん?これ?これは、あぁ、丹沙汰か、これはニサッタって読むんです。稚内にある酒蔵ですが、アイヌの伝統的製法を取り入れたどぶろくですわ。ニサッタって、アイヌ語で明日って意味なんですわ。」

「どぶろくがあるんですか?」

「まぁ、合法な酒なんで、正確には濁り酒ですけどな。」

「それはどこで手に入りますかね?」

「丹沙汰ですか?うーん、丹沙汰で直接買ってるんで、店で売ってるのは見たことないような気がするわ・・」

「酒蔵での直売しかしてないんですか。残念です。」

「飲んでみたいんですか?丹沙汰を?」

「はい、飲んでみたいです。」

「わしのウチに1ケースあるんで、1本持ってきますかい?」

「え?良いんですか?飲んでみたいです、どぶろく。」

「結構癖強いんだけど、そこが良いんだわ。」

「私、隊員クラブで地酒飲み比べセット飲んだんですけどね、『北の蔵山岳』と『大虎一代』が気に入りました。」

「『大虎一代』はアルコールガツンときて、パンチ効いてて、わしも好きですわ。」

「そうそう、凄いパンチありますよね、鮭ルイベ漬をアテにしたら、もうばっちりでしたよ。」

「ほー。隊員クラブに鮭ルイベ漬もあったんですかな。新しい店長は若いけど良い趣味してるようですな。」


酒豪族の頭は、北海道の酒豪族と出会ってしまって酒談義が始まってしまったようだ。


柏木さんを乗せたアリエスが戻ってきた。あれ、橋田さんは手綱を引いてないってことは、柏木さんが一人でアリエスを動かしてるんだ。すごいな。


「あれ?沢田さん、リブラ、なにか問題ありましたか?」

橋田さんが尋ねた。


「いやいや、この人と酒談義で話し込んでしまってましたわ。」

「は?なぜここで酒談義?」

「ほれ、この箱、わしの家から持ってきた『丹沙汰』の箱なんだけんど、ここから話が始まったんだわ。」


「飛鳥馬さん、お酒の話になると目が無いですよねー。」

いや、柏木さん、あなたも同族ですよ。今たまたま馬の方が興味が強いだけでしょ。


「橋田さん、わたし一人でもう一周してきていい?」

「沢田さん、良いですよね?」

「橋田ちゃんに任せるわ。橋田ちゃんが大丈夫と思えばだいじょうぶっしょ。」

「はい。じゃ、柏木さん、ソロでどうぞ。頼んだよ、アリエス。」


橋田さんがアリエスの首を撫でた。


「行ってきまーす。」

アリエスと柏木さんがゆっくりと歩いて行った。


ようやく飛鳥馬さんもリブラに乗り込んだようだ。


「じゃ、下田さんはヴィルゴにしましょう。こちらへどうぞ。」

橋田さんが、酒談義始まりの地、『丹沙汰』の箱をヴィルゴの左脇に置いた。


「箱の上に立って、自転車にまたがるイメージで馬に乗ってくださいね。」


自転車にまたがるって言っても、オレあまり自転車も乗らなかったから、ここ数年乗ってないんで、ちょっと自信ないぞ。よっ、あれ? 難しいぞ。 あれっ?


「下田さん、難しいですか? これ、鐙って言うんですけど、先にここに左足をかけた方が乗り込みやすいっていう人も居るので、試してみますか?」


「あんまりスポーツ系しないもので・・。」

オレがチームで一番の若手なのに、恥ずかしいじゃないか。


「えぇと、ここに左足をかけて、あ、この方が馬に近いんで乗り込みやすいかも。よっと。あ、乗れた。うわ、高いぞ、結構怖いな。」


「大丈夫ですよ。右足も鐙にかけて、手綱をしっかり握ったら安定しますよ。」


そうは言われても、この目線の高さだけでも十分怖いんだけどな。まずは右足をここにかけるのか。あ、両足が踏ん張れるようになるんだね。で、手綱を握って、と。あ、確かに体は安定したけど、そもそも馬が動くんだから、怖さはちっとも変わらないよ。


「では、ゆっくり進みますね。」

橋田さんが手綱を引くと、ヴィルゴがゆっくりと歩き出した。


うお、怖いけど、気持ちいい方が少し強いかな。


「もう少し速度上げますね。」

橋田さんが普通に歩く位の速度にあがった。


パカッ、パカッ、パカッ、パカッ

馬の歩みに合わせて上下に動くんで、自転車に乗ってるのとは違う進み方で、ちょっと面白いぞ。


橋田さんに引かれて一周まわって戻ってきたら、飛鳥馬さんは既にソロでリブラに乗って、ゆっくりと歩いていた。


「下田さんは、一緒にもう一周回りましょうか。」


橋田さんからのソロの許可が出なかった。

ま、オレもまだちょっと怖いんで、手綱引いてもらってる方がありがたいからちょうどいいんだけどね。


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