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第2話 教室にて

 「よし、じゃあ今日は、ゲームの基本に立ち返って、スーパーマリコシスターズにするか。さっき言った通り、レベル1つ上げで行くぞ。いいかぁ、とにかく気合入れて行けよ! じゃ、開始!」


クラスメイト達はそれぞれゲームを開始したようだ。

懐かしい電子音が教室中に響いている。


「おい、下田、何してる? 時間を惜しんでプレイしないと強くなれないだろ。こういう所が最下位になる原因なんだぞ。時は金なり、英語で言うなら「タイムイズマネー」ってことだ。ほら、しっかりしろよ。」


川崎先生に注意されてしまった。

全く事情が呑み込めないが、カバンからコントローラーを出すと、オレの机にも仮想モニターが表れて、画面にスーパーマリコのオープニング画面が表示された。


まさか今のタイムイズマネーの部分が英語の授業だったのか?

全く訳がわからないが、えぇい、もうヤケクソだ!とスーパーマリコを始めた。


自慢ではないが、非リアで基本的に家でネットとゲームが人生の全てであると言っても過言ではないオレは、ゲームが結構得意だ。まぁ他人から見たら、家でじっとゲームしてる引篭もり一歩手前の人ってことなんだろうけど。


こんな懐かしいゲームは久しぶりだな。でも、やっぱり面白い。確かにこれがゲームの基本なんだな。


パンパンパンパン。「よーし、そこまでだ!」川崎先生が大きく両手を叩いて全員の注目を集めた。

クラスメイト達がコントローラーを机に置くと、机の上の仮想モニターが消えた。


川崎先生が黒板の前で右手を上下に振るゼスチャーをすると、黒板が大きな仮想モニターに変わる。

「さ、これでぴったり1時間だ。得点は、と。 オーケー、グルグル、全員の得点を表示して。」

モニターには全員の得点が棒グラフで表示された。


「うわ! なんだこの飛びぬけた得点は。下田!下田じゃないか! これって、スーマリの世界ランキング級の得点だぞ!」


一斉にクラスメイト達がオレを見て、声をかけてくる。

「下田、スゲーじゃん」「やるなぁ、お前」「イケてるじゃんか!」


こんなに沢山声をかけられたのは、入学して以来初めてかもしれない。

嫌われてたり、虐められたりしてる訳じゃなく、単にみんなと絡まないだけなので、皆の側からすれば、たまたまタイミングだったんで声かけただけなんだろうけど、オレ的には超嬉しい出来事だ。


なんだかガヤガヤした教室に終業のチャイムが鳴った。

「おい、下田、後で職員室に来いよ。少し話をしよう。」

川崎先生はそう言い残して教室を出て行った。


これは、皆と盛り上がる初めての休み時間か?と期待したが、休み時間は全く普段通り、それぞれがスマホいじったり、何組かのグループが集まってタブレットの画面を見せ合ったりしているだけで、オレが友達の輪に入れた訳ではなかったようだ。


 次のチャイムが鳴り終わると古典の宮下先生が教室に入って来た。

いや、入って来たのは確かに宮下先生ではあるが、古典の担当なのかは自身が無くなって来た。なにせ、英語でスーマリだったし。


「えーと、山村先生から直々にお願いがありました。皆さんをもっと鍛えて欲しいそうですよ。ということなので、今日は講義は省いて実践トレーニングにしましょうか。」


まさかとは思っていたが、やはりクラスメイト達はゲームコントローラーを手に取った。さっきと同じように机の上に仮想モニターが表れる。


「では今日はグランドツーリング、大会でも使われる予定の8にしましょうか。」

仮想モニターにグラ8のオープニングが表示される。


オレはレース系はステアリングコントローラーを使う派なのだが、持ち運ぶようなものでもないので、学校ではコントローラーなんだな、という、根本的に、なんで学校でゲームをしているのか、という問題を完全に無視したままで妙な納得をしつつゲームを始めた。

もちろんレース系だってオレの得意範疇だ。


「はい、そこまでですよー。」

宮下先生の一声で、やはり先ほどと同様、全員コントローラーを机に置くと、仮想モニターが消えた。


黒板の前に、これも先ほどと同様、大きな仮想モニターを出し、得点の棒グラフが表示される。


「えぇっ? 何ですか、この得点は? これは世界ランキング級ですよ。誰ですか、これ。お、下田君? これは驚きの得点ですよ?」


またしてもクラスメイト達がオレを見て盛り上がっている。

「おい、マジかよ下田。」「世界取れんじゃね?」「オレらのチームに入ってくれよ。」


終業のチャイムが鳴ると、宮下先生は慌てたように、挨拶もそこそこに教室を飛び出して行ってしまった。

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