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9話 螺旋ほどける


 

 二人が乗った車は本部のある市街地を抜け、町のはずれへと向かっていく。

 

 助手席に座るシウは、暖房の心地よさに負け、先程から小さな寝息を立てていた。

 赤信号で停められた時、ディオは彼女の腕から落ちかけていた紙袋を取り、後部座席へと移す。

 それでもすやすやと眠り続けるその横顔を少しの間見つめ、ディオは軽くため息を吐く。

 

「まさか、俺がパートナーとして指名されるとはな……」


 信号が青に変わる。

 ディオはハンドルを握り直すと、再び車を走らせた。


 タイヤが道路の窪みを踏んだ際、車体が揺れる。

 その際、彼の黒髪につけられたリングも揺れ、日光を反射して赤く煌めいた。

 そのリングの色は、呪化の“赤い実(コア)”のような深く濃い赤色だった。

 

 


 

 二人の乗った車はしばらく走り続け、やがて、1つのトンネルに差し掛かかった。 

 そのトンネルをくぐり抜けると……目の前に、青い海が広がった。

 

 車はそのまま海沿いの道を走っていく。海岸線が眼下に広がり、波が砂浜に寄せる様子が見えた。


「んん……海……?」

「起きたのか」

「うん……窓、開けていい?」

「ああ」


 シウが窓を開けると、ひやりとした空気と共に、潮の香りが車内に舞い込んでくる。

 

「A班の社員寮は海の近くにあるんだ」

「ほわー……」

「最初は色々と気になるかも知れないな」

「ううん。それって、毎日海が見られるってことでしょ?」

「そうなるな」


 遠くで煌めく水平線を見つめながら、シウが微笑んだ。

 

「それって、なんかステキだね」

「……そうか」


 車は海岸線に沿って走り続ける。

 少女の期待と不安の両方を抱えた緋色の瞳は、過ぎ去る青い海を見つめ続けていた。


 

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