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79話 虹色の、純白な天使 Part.4


 

 少女がその後どうなったか、彼は知ることはなかった。

 

 逃げ出した先には、彼女に似た人間がいっぱい居て、

 彼は何かに迫られるように、見つける度に彼女達を攫っては、()()()()()()()を与え続けた。


 

「きっとこの子なら」

 

「だめだった」


「あの子なら」

 

「……また、こわれちゃった」



 積み上げた罪の数だけ人々の怒りを買っていき、ついに捕らえられた彼は、冷たい白銀の鎖に繋がれた。

 暗い蔵の中に閉じ込められ、数えきれないほどの月日が流れた。

 白銀の鎖が体を焼く不快な感触と、底知れない闇の記憶が、過去のすべてを塗りつぶしていった。


 

「――あれ。なぜぼくは、あんなことをしてたんだっけ……?」

 

 

 もはや少女(リィナ)の顔も、彼女へ犯した罪も、記憶の霧の向こうに消え去っていた。

 ただ、心の中心に空いた穴だけが、何かを埋めろと叫んでいて。


「(わからない。でも、さがさなきゃ、みつけなきゃ、手に、入れなきゃ……)」


 暗い、暗い蔵の中。

 死ねもしない彼は、ずっとその思いだけを身体に留めて生き続けた。




 

 ――何十年、いや、何百年経ったのか。

 久し振りと言う言葉では到底追いつかない程の年月が流れた後。

 唐突に、天使は外へと出された。


 しかし、自分で羽根を抜き続けた翼は、やがては勝手に羽根が抜け落ちてしまうようになり、厄災を振りまく存在として忌み嫌われていく。

 それでも彼は、自身に空いた“何か”を埋めるために、街を飛び続けていた。

 

 そうして、何度目かの冬が終わりかけた時。


 彼は見つけたのだ。

 

 街の中で一人だけ。

 光を薄く纏い、キラキラと輝く不思議な少女を。


 それは、混濁した記憶の中を突き抜けるような衝撃だった。


 

 あれは大事にしよう。

 絶対壊さないようにしよう。

 大切に捕まえよう。

 大切に捕まえて、ずっと大事にするんだ。


 彼が少女に覚えたその感覚は、残酷な子供が「珍しい虫」を見つけた時の、無邪気で一方的な独占欲によく似ていた。


 

 ――その光が、かの『ディオ』からもたらされたものとも知らずに。




 

 天使が、ゆっくりと目を開ける。


 うっすらと見ていた過去の記憶はまどろみの中へと溶けて消え、その脳裏には、あの少女の光しか残っていなかった。

 

「……きっと……きっとそうだ……きらきらしてて、やさしくて……」


 中身の飛び出した薄汚いクッションを愛おしげに抱きしめ、天使は「ふふ」と、ひどく幸福そうに笑った。

 

「こんどは、ぼくをえらんでくれるよね……シウ」


 見当違いな理想と、一方的な約束を少女に押しつけると、彼は再び幸せな夢の中へと沈んでいった。


 

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