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70話 カタチとココロ Part.2



 五人が白い町の中を探索している頃。

 A班の社員寮では、留守を預かるイクスが台所に立っていた。


 Tシャツにハーフパンツというラフな格好で、長い銀の髪をひとつに束ねたイクスは、鼻歌を口ずさみながらフライパンを振っていた。

 フライパンの中では鶏肉とごぼうが甘辛いタレにからまり、香ばしい匂いが立ちのぼる。

 ひと切れをつまんで口に放り込むと、その出来栄えに思わず唇の端がニッと上がった。

 

「よっし、上出来だな!」


 盛り付ける皿を取ろうと振り返ったとき、窓の外の干された洗濯物が目に留まった。

 その途端、浮かれていた表情が曇る。


「あー……そーいやナスカが洗濯物取り込んで欲しいって言ってたっけか……」


 “アテンダント”と呼ばれる、街を守るために人工的に造られた存在だったイクスとナスカ。

 しかしナスカの正体は、イクスの憧れである――自由に生きられる“人間”だった。


 イクスは眉間に皺を寄せると、洗濯物から目を反らし、戸棚から皿を手に取った。


「そーいや、ディオ。あいつもなんなんだ……?」

 

 ファースト社特製の白い柄の武器には、呪化(ジュカ)相手に発火を引き起こすものもあるとは聞く。

 だが、あの時のディオはわざわざ武具を外し、()()で発火を引き起こしていた。


「まさか、あいつもアテンダントじゃないとか……」


 ――廃ビルでの、あの光景が頭をよぎる。


 彼の引き起こした白い炎に包まれて、悲鳴を上げながら燃え上がっていった“ヒトガタ”の呪化(ジュカ)達。

 炎に照らされたディオの横顔が、一瞬だけ悲しげに見えたのを、イクスは覚えていた。


 呪化が燃え尽きるにつれ、今のように焦げた臭いが漂い、煙が辺りに充満していって……。


「…………ん? 臭い? 煙!?」


 ふっと気づくと、フライパンから煙が上がっており、「うおお!?」と声を上げつつ慌てて火を消した。


「あーーくそっ! ウダウダ悩むなんてらしくないぜ、オレ!」


 無事な鶏肉をお皿に盛りつけ、冷蔵庫からお刺身と冷えた缶ビール、それから小さめな青い瓶の日本酒を取り出した。

 それを用意していたお盆の上に、次々と乗せていく。


「おっと、これもだな!」

 

 小さめの透明なグラスを手に取ってふっと笑いかけると、そうっとお盆の上に置いた。



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