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65話 ただいまを言えたら Part.1


 

 "天使"がひた隠しにしようとする場所、ハシバミ町。

 その町の調査に選出された対策部A班の四人……ディオとシウ、セイヤと、そして、ナスカ。

 

 彼らが本部に呼び出された後、何度か作戦会議が行われ、

 そして――。


 ついに、その日が訪れた。


 

「おまたせしました~」


 三人の前に、制服姿のナスカが現れる。

 ナスカの制服は、上着は皆と同じだが、下はレギンスのようなぴったりとしたズボンの上に、長めのラップスカートを巻いた形になっていた。


「ナスカちゃんの制服って初めて見たけど、カッコイイ……!」

「うふふ、ありがとうございます~」

 

「――ナスカ!」


 ナスカに、セイヤが駆け寄っていく。

 いつもは違う色を纏っていた二人が、今日は同じ黒を身に纏う。

 

「俺、こうして制服姿で並べるの凄く嬉しいよ。でも……無理はしないでね」

「ありがとうございます~。セイヤさんこそ、お気をつけてください」

「うん」


 セイヤがシールドを持つ手を握りしめる。


「今度は、俺が守るから」





 彼らはいつもの装備に防刃ベストを重ねており、手につけたプロテクターも、指先まで覆われるしっかりとしたものになっていた。


「あーっつーーい……それに動きにくーい……」

「我慢我慢。何があるか分からないからね」


 炎天下の中、文句を言うシウをセイヤが(なだ)める。

 

 ――そんな四人の元に、一人のアテンダントが現れた。


「どーも皆さん。お待たせしました」


 現れたのは、先行部のリカルドだった。

 彼もA班の面々と同じ装備を身につけ、大きいツールバッグのようなものを肩から下げている。


「それでは予定通り、僕が先導します。本当はS班も護衛として派遣したかったみたいですが……あんな状態ですからね」

「いいや、十分だ。お前も、S班にも匹敵する位の腕はあるだろう」


 ディオの言葉に、リカルドは意外そうに彼を見つめた後、「光栄です」と笑った。

 

 

 街へ続く道は、他の先行部のアテンダントが封鎖しており、その脇を五人は通り過ぎる。

 町に近づくにつれて空気が冷えていき、暑いと騒いでいたはずのシウが自身の腕をさすった。


「着きましたよ」


 そういうと、リカルドは何もない空間(・・・・・・)を前に足を止めた。

 先には、まだ道が続いているように見える。

 

「……? まだ先じゃないの?」

「見えていないだけなんです。ここ、触れてみてください」


 シウが手を伸ばすと、その指が何かにぺたりとふれる。

 つるつるとしており、グローブ越しでもひやりと冷たい感覚が伝わる。


「なにこれ、透明な、壁……?」

「恐らく、天使の術か何かでしょう。こいつが町を覆い尽くしていて、その為に長らく調査が出来なかったんです」


 リカルドは肩から提げていたバッグを地面に下ろした。


「ですが……それも今日で終わる」


 バッグの中から何かを探り当て、取り出した。

 

 それは彼の手のひらより一回り大きく、お弁当箱のような形をしており、電卓のようなパネルと配線が繋がれていた。

 中には何か液体が入っているようで、リカルドが動かす度にちゃぷちゃぷと水音がした。


「それは?」

「爆弾です。この壁専用に開発されたもので、人への殺傷能力はありませんが……念の為、離れてて下さい」


 リカルドが見えない壁に爆弾を取り付けると、まるで爆弾が宙に固定されているような、なんとも不思議な光景が繰り広げられた。


「こんなもんかな……よし」


 リカルドが軽く壁を叩き確認した後、四人に振り返った。


「では、最終確認です。中での目的は覚えていますか?」

「はい。天使を封じていたモノの回収……ですよね?」

「そうです。そして、中では何があるか分かりません。万が一の事があったら、僕が(おとり)になりますので、僕のバッグだけ持って逃げてください。重要なのは、貴方達の生存と、これから回収するモノを本部に持ち帰る事です」


 それは、既に作戦会議で何度も説明のあった事だ。

 納得のいかない表情を浮かべながらも、異議を唱える者はいなかった。


「それでは、これより壁をこじ開けます。穴が開いた瞬間に、すぐに中へと侵入してください。瞬時にふさがり始めますんで、迅速に行動を。爆弾に予備はありません」

 

 全員が頷いたのを見届けた後、リカルドは爆弾を操作し、離れた。


 彼が離れた瞬間、ガツンッと何かが叩きつけられるような音が響き、空間にヒビが入る。

 そのヒビの合間を赤い液体が伝ったかと思うと、瞬時に白い炎が燃え上がる。


 それらが一瞬のうちに起こったかと思うと、瞬く間に壁はぼろぼろと崩れ落ち、

 開いた穴の先には――建物が建ち並んでいた。

 

「成功ですね。さ、行ってください」


 割れた壁の隙間から、セイヤが入り込んでいく。

 A班の三人もそれに続き、最後にリカルドが入り込んだ。


 少しした後、壁の穴は塞がりはじめ、町の風景は完全に見えなくなっていった。


 

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