45話 春、たまゆら Part.2
『休みだったのにほんっとーにごめん!! 後で埋め合わせするからっ!』
そうして朝からセイヤに謝り倒され、急遽見回りに行く事となったシウとディオ。
「あたし達だけで見回りって初めてだね」
「そうだな」
昼過ぎの町には、長い冬の終わりを告げるかのような穏やかで優しい風が吹いていた。
二人とももうコートは羽織っておらず、陽の光を受けた首元の銀色の狼のバッジが煌めく。
「シキとアルテちゃん……本当に突然だったね」
「まあ、仕方が無いだろう」
「うん。でも、お別れも出来なかったのはちょっと寂しい、カモ」
「きっとまた、会う機会はある」
「うん……」
暖かい日差しからは春の気配がしており、桜の木では少しずつ花が咲き始めている。淡いピンクの花弁を見て、シウがほのかに微笑んだ。
冬が長いせいか、この街の春は酷く短い。
あっと言う間に雨の季節に入り、やがてすぐに暑さの厳しい夏が訪れるだろう。
そんな刹那の春を楽しもうとしている人達で、街の中心部は前よりも賑わいがあるようだった。
前はシウが店のショーウィンドウの前から動かなくなる事があったが、最近は自覚を持ってきたのか、未練がましく見つめながら通り過ぎるくらいに成長した。
ただし、
「あっ……」
シウの足が止まる。
視線の先には、広場に集まるキッチンカーや屋台、そして、入り口にでかでかと掲げられた【新春スイーツフェスティバル】と言う看板が。
そう。
こういう催し物には、滅法弱かった。
ふらふらと向かおうとするシウを、ディオが襟首を掴んで引き留める。
「……ディオ~」
「駄目だ。勤務中だ」
「ちょっとだけ! すこーし見るだけ!」
「休みの時にしろ。お前、それで前も怒られていただろう」
「次の休みまでやってるかわからないじゃん~!」
「駄目だ」
「んぬぬぬぬぬ~」
「行、く、ぞ」
「ああ~!」
半ば引きずられるようにして、シウは連れていかれる。
「ディオのばかぁ~……」
「……次の、休みの日……」
「ん?」
「次の……休みの日、俺もとことん付き合ってやる」
「……うん!」
途端、うきうきで歩を進めるシウの後を追いながら、ディオは溜め息を吐いた。




