43話 きっとこうじゃなかった
※少々ショッキングな表現があります。苦手な方はお気を付けください。
街から少し離れた林の中。人気の無い、木々の向こう側。
2つの人影が、そこにはあった。
片方の人影は地面に両膝をついて両手を握り締め、まるで祈りを捧げるかのような格好で、何かを呟き続けている。
ファースト社の黒い制服を着ているが、腕章が無い事から、アテンダントであると思われた。
その傍らには、人が倒れている。
同じ黒い制服に身を包んでおり、白い腕章がつけられている事から、エクスナーであると分かる。
――が、その首には柄の白いナイフが突き刺さっており、うつ伏せで血に沈むその姿は、一目見て明らかに事切れている事が分かる。
遺体の隣で、アテンダントは自らの両手を血が滲む程に握り締めながら、
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、また、わたしがまちがえちゃったから、ほんとうにごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、まちがえて、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、」
譫言のように謝罪の言葉を繰り返していた。
何度も、何度も、何度も。
アテンダントは握りしめた両手をぎこちなく解くと、地面に落ちているもう1本のナイフを手に取り、
そして、
「かけるさん」
そう呟いた後、自らの胸目掛けて刃を突き刺した。




