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36話 襲来・シキとアルテ



 A班が“ケモノガタ”の襲撃を受けてから数日後。

 この日はスワンの計らいにより、慰労の為にと全員が休暇扱いになっていた。


 ケモノガタ戦の後処理が一段落し、各々が自由に過ごす中、セイヤはリビングに設置してある共用のノートパソコンで何やら調べ物をしていた。

 そんなセイヤのルナガル(ファースト社専用スマートフォン)に、スワンからの着信が入る。


「はい、A班セイヤです」

『セイヤさん、こんにちは。本部のスワンです。調子はどうですか?』

「どうも。変わりないです。えーと……何か用事ですか?」

『お知らせです。先のケモノガタ襲撃の件を省みまして、今日から応援要員を二人、A班に派遣する事となりました』

「えっ、応援要員?」

『そうです。確か、まだ空き部屋がありましたよね? そちらに滞在させてあげてください』

「確かにありますけど……え、ちょっと待って、さっき今日からって言いました?」


 セイヤが言い終わるのと同時に、社員寮への来客を告げる呼び出しチャイムが鳴った。


『あ、着いたようですね。では、仲良くしてあげてください』

「えっ?」

『大丈夫です。戦力的には問題無い方々ですよ。それに顔見知りの方ですし』

「いや、違う、そこじゃなくて、え、顔見知り?」


 情報量が多い。

 そもそも、もう来てるなんて全く聞いてない。

 

 セイヤがそう言う前に、もう一度チャイムが鳴り、二階から誰かが降りて来る音が聞こえた。


『では、そろそろ出てあげてください。それでは~』

「え、え、え!」


 そうしてスワンからの通話が一方的に切られた。


「なんで……なんでいつもいつももっと事前に教えてくれないんですかーー!?!?!?」


 とっくに通話の切れたルナガルに向かい、セイヤは叫んだ。





 チャイムに気づき降りてたのはシウだった。


「あれ、誰もいないのかな? はーい」


 シウが玄関へ向かって扉を開けると、そこには長めの茶髪の男が立っていた。


「……ん、あー……んだぁ、おめぇもA班か?」


 灰色の垂れがちの目でシウを見下ろしたその男性は、そう言って頭を掻く。

 前髪がセンター分けされた茶髪の男は、20代後半くらいに見えた。ファースト社の黒い制服の上に、オリーブ色のモッズコートを着て、その腕にはエクスナーである事を示す白の腕章と、“S”と書かれた赤の腕章がつけられてる。


「あの、え、えと、ど、どなたですか?」

「わー! ごめん、シウ! 出てもらっちゃって……って、シキさん!?」

 

 ばたばたと忙しなく現れたセイヤが、シキの姿を見て驚く。

 シキと呼ばれた男は「よぉ」と挨拶する。


「呼び捨てで構わねぇよ。おめぇは……あー、確かセイヤとか言ったか?」

「あっ、うん。ここに何か用でも?」

「ここA班の社員寮だよなぁ? リーダーはいねぇか?」

「A班のリーダーは俺だよ」

「ほお、おめぇがリーダーだったのか。ん、分かった」


 うんうん、と一人納得したように、シキは頷く。


「じゃリーダー、今日から世話になんぞ。よろしくなーぁ」

「えっ」


 言い終えるや否や、シキは靴を脱ぎさっと揃えると、A班の社員寮内へずかずかと入り込んでいく。


「え、ちょ、え!? 待って待って!」

「んぁ?」

「世話になるって!?」

「スワンから聞いてねぇのか? この辺りでケモノガタが出始めてっから、オレらがここの応援として派遣されたんだよ」

「えっ、あ、さっき聞いた……」

「だろぉ? A班の社員寮が部屋空いてっから、そこに行けって言われてなぁ。じゃ、世話になんぞー」

「ちょっ、ちょちょ! 待って! とりあえず待ってーー!!」


 セイヤの制止を聞かず、ずんずんと進むシキ。

 二人が奥へと消えていくのを、シウは玄関先に立ち尽くしたまま、ぽかんと眺めていた。


 そのシウの肩を、つんつんと誰かがつつく。

 シウが振り向くと、そこにはワインレッドの髪の少女が居た。


「あのー、お邪魔しても良いですか?」

「あっ、うん」

「どうも、初めまして。シキ様のアテンダントのアルテです!」

「あ、シウ、です」


 赤い腕章をつけた少女が、ぺこりと頭を下げる。外ハネの髪がぴょこぴょこと揺れ、まん丸い金色の瞳がこちらをじっと見つめた。

 身長もシウと同じくらい。だが、見た目の年齢は彼女より下であろうか……?


「シキ様はどちらへ行きました?」

「なんか、セイヤ……えと、うちのリーダーと一緒に中の方に」

「なるほど。リーダーさんに会えたと言う事はー……、荷物を下ろしても良さそうですね!」


 アルテは一度玄関から出ると、程なくして大きな段ボールを3つほど重ねたものを抱えて戻ってくる。


「空き部屋があると聞いたのですが、それはどちらですか?」

「えっと、二階の……表札がかかってないトコ、かな?」

「わかりました!」


 アルテは段ボールを二階へと運び入れる。

 その後も、ひょいひょいと手際よく荷物を運んでいった。


「……ふう、では少しの間ですが、よろしくお願いしますね!」


 アルテはぺこりと頭を下げると、社員寮の奥へと向かっていった。


「…………えぇ…………」


 嵐のような二人の来訪に、シウはただただ立ち尽くすばかりだった。

 


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