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27話 ハプニング Part.1



 今日は、対策部の仕事が休みの日。

 シウは真新しい洋服に身を包み、一人で町を歩いていた。

 

 香りが魅力的なパン屋さん、キレイなクリームソーダが売りの喫茶店、センスの良いちょっとした雑貨屋……。

 それぞれの店の前を通りかかり、ちらりと視線を投げるも、結局中に入る勇気が持てずに通り過ぎてしまう。


「ディオも、来てくれたらなぁ……」


 横目で店内を覗きながら、独り言を呟いた。


 元々人見知りがちな彼女は、一人で新しい場所へ行くことにどうしても躊躇してしまうのだ。

 同じく休日のはずのディオは、朝から本部へと出掛けている。前日から忙しそうだった彼に対し誘いをかける勇気が持てず、結局、こっそり用意しておいた新品の洋服も自分の為だけのものになってしまった。

 

 小さく溜息を吐き、一人でも行けそうな場所がないか調べる為に、シウは白いスマートフォン……ルナガルを取り出した。


「……おや?」


 男の声。

 その声がした方向を向くと、変な男がこちらを見ており、視線がばっちりと合ってしまう。

 シウはすぐに視線を逸らし、手元のルナガルを見るフリをした。


 だが、

 

「おやおやおやおや」


 呟きながら、目の合った白髪の男性がつかつかとこちらへ寄ってきて、すぐ隣に並んだ。

 白衣のような服の上にコートを羽織ったその男は、髪こそは白いが、よく見ると若い男のようだった。

 狐のようにつり上がった金色の瞳が、少し厚みのある眼鏡の奥からじっとこちらを見つめる。


「なっ、えと、あの、な、なんか用、ですか……?」

「いんやー、かわいいお嬢さんだなあって」

「……不審者」

「ちょ、違う違う!」


 通報しようとルナガルを操作し始めたシウを、男は慌てて止める。


「それ! 手に持ってるそーれ! ルナガルでしょー!?」

「えっ」

「僕はファースト社の関係者だよ! そう言った装備とかの開発をしててねぇ、そのルナガルも僕の作品なんだよ~?」


 そう言って男は、白いスマートフォンを指した。


「実際に使われてるの見て嬉しくてさー、思わず話しかけちゃった! びっくりさせてごめんね~?」

「そうだったんだ……! こ、こちらこそごめんなさい、不審者って言っちゃって」

「いんやー、あんまり僕の顔は知られてないしね~。いーいよいいよー」


 そう言うと、男はシウが手に持つルナガルをじっと見る。


「……ふむふむ。キミは割と新人の……ああ、そうか、なるほどなるほど、キミが噂のシウちゃんか!」

「えっ、なんで、名前」

「んー、そうだねー。僕はイナモリ。イナちゃんって呼んでよ」

「い、イナちゃん?」

「そうそう! シウちゃん、今って暇かい?」

「ひま、です、けど」

「じゃあ行こっか!」

「え、あの、ど、ええええ?」


 勢いに流されるまま、「こっちこっち!」とイナモリに導かれ、二人はとあるビルの前に辿り着く。


「あ、動物は好きかい? わんことか!」

「え、あの、すきです、けど」

「よし! 決まりだね! さ、行こ行こ!」

「えっ、えええ」


 イナモリに誘われるまま、シウは彼と共にビルの中へと消えていった。



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