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21話 ヒトか、ケモノか Part.1


 

 振り下ろされる黒い呪化(ジュカ)の腕を、ディオはガントレットで受け流し、反撃とばかりに白銀の拳を真っ正面から叩き込んだ。

 バヂッと大きな白い火花が飛び散ったと同時に、呪化の頭部が粉砕され、辺りに焦げた匂いが充満する。

 

 その激しい一撃でよろめいた隙に、セイヤが後ろから柄の白い剣鉈(けんなた)で肩から右腕を切り落とす。

 

「今だよ! シウ!!」


 セイヤの合図で、シウが飛び出した。


 セイヤが切り落とした傷に、両手で握りしめた白い柄のナイフを突き立て、力いっぱい引き下ろす。

 パチパチと小さな火花を飛び散らせながら、ナイフは呪化の体を滑らかに引き裂いていく。


 広がった傷に手を突っ込み、わき腹の辺りにあった“赤い実(コア)”を探り当て握りしめると、抵抗するかのように黒い根が手を覆っていく。

 圧迫感は感じるが、痛みは無い……腕に着けたプロテクターが上手く防いでくれているようだ。


「んっ……ぐううー!」


 そのまま渾身の力を込めて、シウは“赤い実”を掴んだ手を引っ張る。

 やがて、ブチブチッ!と音を立て、細かい根に覆われた腕が引き抜かれた。


「やっ……た! っわぁ!!」

「おっと!」


 勢い余って後ろへ倒れそうになるシウを、セイヤの腕が受け止める。


「セイヤ! ありがとー!」


 セイヤは応える代わりに、にこりと微笑み返した。

 呪化が悲鳴を上げながらびたりと動きを止め、やがて散り散りに消え去っていった。


「やったね、シウ!」


 シウの手の中で、“赤い実”がキラリと煌く。

 ――同時に、彼女の胸の奥に、つきん、と痛みが走った。





 討伐を終えた現場。先行部が状況確認を進めるその横で、シウは道路脇の縁石に腰かけ、浮かない表情をしていた。

 

 そんなシウの隣に、報告を終えたセイヤが腰かける。


「シウ、どうしたの? なんかあった?」

「んー……ううん」

「もしかしてさ、呪化が元々人間だったのを気にしてる? ……自分が、人を殺してしまったんじゃないかって」

「……!」


 ドキッとしてセイヤを見ると、彼は翡翠色の瞳を細めながら優しく微笑んだ。


「シウだけじゃないんだ。一番最初に討伐した時、そうやって気にしちゃう人が多いんだってさ」

「そう、なんだ」

「うん。でもさ、気にしなくて良いんだよ。呪化してしまった人は、もう人間じゃ無いから……それに、放っておくと他の人へ危害を加えてしまう。だから、俺達がしている事は正しいんだよ」


 『呪化すれば人では無い』

 それは、ディオと会ったばかりの頃にも言われた言葉だった。しかしシウはまだ、あの歪な人の陰のような姿に、それが人間だった頃の面影を見てしまう。


「セイヤは、すごいね……まだ、あたしは割り切れないかも」


 シウがそう言うと、セイヤはどこか寂しそうに笑った。

 

「それはそうとさ、ディオが帰ってきて良かったね? すっごい寂しそうだったから心配してたんだ」

「へぁっ!?」


 突然のセイヤの発言に、彼女は驚き、声を裏返らせる。


「さ、さびしいなんて、そんな」

「おい、帰るぞ」

「あ、はーい! ほら、行くよシウ」

「……べつに、さびしくなんかなかったもん……」

 

 ぶつぶつと言いながら立ち上がり、シウはセイヤの後をついていく。

 不満げに膨らませられた彼女の頬は、少し赤くなっていた。

 


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