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閑話2-3 先行部たるもの Part.3



 あれから幾日か経った後――。

 

「では、失礼します」


 回収された“白い羽根”を届けた後、頭を下げながら部屋を出る。そして、リカルドは自分のルナガルを確認しながら、本部の廊下を歩いて行く。


「明日はー……14時からG地区の見回りか」


 ルナガルには、その日の相方となる人物の名前も表示される。

 しかし、ここ最近、そこにザックの名が示される事が無くなっていた。


「そういや、最近あいつみないな」


 

「――ザック? ああ……亡くなったってよ。呪化(ジュカ)から一般人庇ったって」


 リカルドの疑問は、あっさりと次の日の相方から明かされる。


「そう、なんだ……」

「おれも知ったの偶然なんだけどなー。他のアテンダントの殉職なんて、いちいち知らされないからなぁ」


 元々、先行部自体が危険な仕事である上に、そこに所属するアテンダント達は軽く扱われるきらいがある。

 だから、こんな事は珍しくなかった。


 その後何人かに聞くと、あの日以来ザックは上の空になっている事があったそうだった。

 少しのミスが命取りになりかねない先行部(ここ)では、何かに心を動かされない方が長生き出来るのだろう。


 その事を、リカルドは分かっていた。 

 だが……。 


 


 

 とある日。

 見回りを終えたリカルドは、あのお弁当屋の目の前に差し掛かり、立ち止まった。

 

 あんな事があった場所だ。既に建物は閉鎖され、程なくして取り壊しが始まると言う。

 様々な物が散乱していた店内も、血にまみれていた床も、既に何もかもがまっさらにされていた。


「……」


 踵を返すと、彼は近くにあったコンビニへと入る。そこで、何種類かのおかずが入った幕の内弁当を1つ購入した。


 本部の休憩室で、持ち込んだ弁当を机の上に広げ、割り箸を割ると手をあわせた。


「いただきます」


 おかずを摘まみ、黙々と食べ進める。


「……あんまり美味しくないな」


 ――あいつが食べていたお弁当は、もっと美味しかったのだろうか。 

 リカルドにはもう、その事を確かめる術が無かった。


 空になった弁当箱をゴミ箱に入れると、リカルドは背伸びをしながら休憩室を出ていった。





 人払いをするリカルドの前に、対策部が現れる。

 その内の一人の腕に、エクスナーである証の白い腕章が光っていた。


「お待たせしました、対策部です!」

「どうも、お疲れ様です。呪化はこの先に居ますんで」

「ありがとう! いってきます!」

「お気をつけて。どうか、ご武運を」


 “エクスナー”。

 その名の意味は、『期待された者』だと聞く。この街の悲劇を解決することを、一方的に期待された者達。

 そして自分達は、そんな彼等をあらゆる意味で導く為の『案内人』。

 

 駆け去って行く対策部の面々を見送った後、リカルドはふっと息を吐いた。

 

 そして、


「……早く、僕達を解放してくださいね」


 彼等の背中に向けて、ぽつりと呟いた。


 

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