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16話 七色ホルダー・キリとイクス Part.1



 まだ太陽の気配が感じられない真夜中。

 ディオのルナガル(ファースト社専用の白いスマートフォン)が、静寂を切り裂くように着信音を鳴り響かせる。


「……俺だ……分かった」


 ディオが短い会話を終えて電話を切ると、素早く着替えを済ませる。

 そして、制服の上からいつものジャケットを羽織り、静かに部屋を出て行った。


 ――その背中を、カーテンの隙間からシウが見ていた。

 ドアが開いた時、廊下の常夜灯が彼の横顔を一瞬だけ照らし出す。


 その横顔は……酷く険しい表情をしていた。


「(ディオ……?)」


 見た事の無い表情の彼を見て、シウは何が起こったのかと考える。

 しかし、元々ぼんやりとしていた彼女の意識は、程なくして夢の中へと落ちてしまった。





 その日の朝。

 

 シウは久しぶりに、酷く緊張していた。

 その原因は、目の前の二人にある。

 

「シウちゃんとの見回りは初めてだな! よろしくなー!」

「よろしくねぇ」

 

 イクスとキリだ。


 今日は見回りの担当だったのだが、ディオが急用で本部へ向かってしまった為、急遽この二人と共に見回りにあたる事となってしまったのだ。

「色んな人と組むのも経験だよ!」とは、セイヤの弁である。


「よ、よろしく、お願いします……」

 

 たどたどしくシウが言う。

 二人とは社員寮では毎日顔を合わせてはいるが、今日は初めて共に仕事をする相手だ。

 

「(何かやらかしちゃったらどうしよ……!)」


 動きもどことなくぎこちなくなってしまい、緊張している事をその全身が物語っている。

 

「シウちゃんガッチガチだなー! 大丈夫か!?」

「そんなに緊張しなくて良いさね。何か飲んでおくかい?」

「は、はい……」

「ほら」


 シウは、キリから差し出されたお茶のペットボトルを両手で受け取ると、そのまま蓋を開けずに口につける。

 それを見たイクスが笑いながらペットボトルを預かると、蓋を開けて再び手渡した。


「す、すみませんん」

「いーっていーって!」


 そんな二人を後目に、キリは自分のルナガルを取り出すと、何かを操作し始めた。


「ここは、今先行部が回ってるみたいだから、んー……今日はこの辺りをまわろうかねぇ」

「あれ、先行部って、見回りもするんですか?」


 “先行部(せんこうぶ)”。

 それはアテンダントのみで構成されている部隊だった。主にシウ達が所属する対策部の支援を始めとして、様々な事を請け負っていた。

 シウが初めて呪化に遭遇した時……あの時に駆けつけていたファースト社の社員も、先行部の一員だったらしい。

 

「そうだねぇ。むしろそっちが本業さ。うちら対策部よりも先行して呪化(ジュカ)を見つけ、現場に向かう……だから先行部さね」

「そうだったんだ……」


 シウも、自分のルナガルを取り出して地図を開いた。

 

 ルナガルの画面上ではこの街全域の地図が表示されており、それぞれの地区で点が動き回っている。

 赤く点滅している点が自分達で、近くの区域では、先程キリが言っていた先行部であろう白い点が動き回っていた。


「よし、準備出来たね」

「んじゃ、行っくかー!」

「よ、よろしくおねがいします」

 


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