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俺、本当に邪魔者だった。

タイトルで一発勝負してる感万歳の作品です。

1話目は若干シリアスっぽいですが、2話目からはガッツリコメディなのでご安心下さい!

この作品は「ノベルアップ+」でも掲載しています。

「〜〜が……〜〜の〜〜に……な神の中の神よ、その力を示せ!『ギガンティック・オメガクラッシュ・ハメハメ・ハーーー!!』」


 辺り一面を崖に囲まれた荒野で、魔王軍と勇者パーティは戦っていた。辺りを埋め尽くす魔王軍の多勢に、後退を続けて持ち堪える勇者パーティ。そこに、空が裂けるほどの轟音が鳴り響く。ついに勇者パーティから最上級魔法が放たれたのだ。


「やっとか!」

「このままじゃ巻き込まれてしまうわ、総員退避よ!!」


 放たれたのは隕石の如き大きさの火球魔法だった。火球は地獄の業火のように地表を覆い尽くし、圧倒的な威力で魔王軍を殲滅していく。もはや魔王軍には成す術は無く、勇者パーティは圧倒的火力の前に押し潰される魔王軍をただただ眺めていた。


――主人公の名は「丸手マルデ 貞男サダオ。22歳男。」この異世界に召喚されて勇者パーティに配属された後、すべての魔法を扱える才能を女神から授かり、魔王軍を何度も殲滅してきた実績を持つ。のだが…。


「サダオ、あなたにはパーティを抜けてもらうわ。」


 先の戦闘後、勇者カザハから直々に勇者パーティからの追放命令が出されたところであった。


「えっ!?」


 突然の辞令に、サダオは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。


「そ、そんな!何を言ってるんだよ、カザハ!じょ、冗談だよ、な…?」


 状況が読めないまま、他のメンバーも険しい顔でサダオに告げる。


「サダオ、諦めてくれ。これは全員で決めたことなんだ。」

「まあ、簡単には受け入れて頂け無いわよねぇ…。」

「…。」


 勇者パーティは5人で構成されている。

 「勇者」カザハ、「クルセイダー」リュウ、「アークソーサレス」ミレイ、「シュラ」カイ、

 そして「大魔法使い」サダオ。皆、異世界から召喚されてきた勇者だった。


「リュウ!ミレイさんまで!カイ、お前も黙ってないでなんとか言ってくれよ!どうしてだよ!いきなりこんなこと言われても納得できねえよ!」


 強く握った手が震える。突然の追放命令など、受け入れられる筈も無かった。


「それは、あなたが私たち勇者パーティにとって邪魔な存在だからよ。」


 カザハが申し訳なさそうな表情で、強く言葉を発した。サダオはまだ、何が何だか分からない様子だ。


「邪魔…?なんだよそれ、どうしてだよ…!」


 思わぬ言葉に打ちひしがれるサダオ。2年間一緒に旅をした仲間の言葉に、怒りよりも悲しみが溢れてくる。そんな中、黙っていたカイが口を開いた。


「サダオ、何でもいい、上級魔法を1つ詠唱してくれ。」

「!! カイ!それは言わない約束だろう!」


 何やら、サダオの知らないところで4人が事情を共有している様子だった。サダオの悲しみは次第に無気力さに変わりつつあった。


「カイ!…上級魔法がなんなんだよ!今はそんな場合じゃ無いだろ!俺が追い出されてしまうんだぞ!」

「サダオ、詠唱してくれ。そうすれば分かる。」

「カイ、本当に伝えるのね…。ごめんなさい、サダオ。」

「何なんだよ!分かったよ、詠唱すれば良いんだろ!詠唱すれば!!」


 サダオは半ばやけくそだった。何が何だか分からない。もう何も考えず、早く終わらせて逃げ出してしまいたいと思い、水の上級魔法を乱雑に唱え始めた。


 その横で、4人は魔力の球を作って浮かせていた。魔力は濃度が濃いほど青く、濃度が薄くなると透明になっていく。4人の魔力の球は深い青色だった。


「サダオ、魔力球が見えるだろう。今の詠唱を続けながら、この球を見ていてくれ。」


 魔力球はカイ達の手を離れてもなお強く青く光り、強い魔力を持っていることが分かる。しかし、サダオが上級魔法の詠唱をしばらく続けると、ある時点で魔力球がみるみる色褪せていった。


(…なっ!?一体何が!?)


 通常、魔力球は自然に消滅するまでにかなり長い時間がかかる。だが、目の前の魔力球はあり得ない速度で消滅し、最後には消えてなくなった。


「な、なんだこれ!何をしたんだよ!」

「いや、俺たちは何もしていない。サダオ、これはお前の能力だ。」


 辛そうに唇を噛み締めたカザハが目を逸らす。リュウとミレイも辛そうな表情でサダオを見ている。


「俺の…能力…?」

「3人とも、長い間一緒に過ごしたお前に事実を伝えるのを躊躇っていた。お前は魔法を詠唱する時、周囲のすべての魔力を取り込んで魔法の威力を底上げしていたんだ。俺たちの魔力も含めてな。お前も、うっすらと気付いていた筈だ。」

「そんな…。嘘だろ…。」


 思い当たる節はあった。自分が魔力の詠唱を終える頃には敵も味方も動きが鈍っていた。それが原因でリュウが傷を追ったこともある。


「そんな…。俺は今まで…。」

「すまないが、ハッキリ言わせてもらう。サダオ、お前は俺たち勇者パーティの邪魔だった。お前の魔法は、味方をも巻き込みかねない危険なギャンブルだったんだ。もっと早く気付いてやるべきだった。」


 ハッキリと告げられ、サダオは肩を落とした。今まで良かれと思ってやっていた行動が、味方を巻き込んでいたのだ。罪悪感や悲しみに包まれながら、サダオは最後の力を振り絞り…


 ダッ


 突然走り出した。


「サダオっ!」


 追いかけようとするカザハを、カイが制止した。罪悪感からか、カイも暗い顔で俯いている。


「仕方なかったんだ。こんな別れ方になったのは、全部俺が悪い。ここ一帯には魔物がいないから、サダオでも安全だろう。」


 そう言ってカイは離れた岩場に腰を降ろし、カザハ、リュウ、ミレイの3人の視界から外れた。サダオが去った跡を見て、3人は曇った表情だった。


「2年間、色々あったわね。」

「ああ、そうだな。」

「そうですね。」


 3人は目を瞑り、色んな記憶を思い浮かべた。

 最上級魔法の詠唱に2時間をかけるサダオ。みんなよりも軽い荷物で一番早く休憩するサダオ。移動魔法に関しては、詠唱するよりも馬車に乗る方が早く目的地に辿り着いた記憶もある。


(((ん?)))


 最上級魔法を制御できず、味方を巻き込んでしまったサダオ。そもそも、「大魔法使い」と「アークソーサレス」で職業が被っているサダオとミレイ。ミレイは上級魔法をすぐに発動できたが、サダオは上級魔法の詠唱も時間がかかってしまうため、最上級魔法を唱える以外の役割はなかった。


(((あれ???)))


 3人は気付きかけたことに気付かないふりをして、再び別れを惜しもうとした。だが、先ほどまでのシリアスで悲しみに満ちたムードはすっかり無くなっており、3人はなんとなく目を閉じて、もう何も考えずにじっと立ち尽くした――。


 サダオは悔しくて泣きながら、一筋の鼻水を垂らして走った。何から逃げたいのか分からなかったが、とにかく色々なものから逃げたかった。ただひたすら、走り続けた。気が遠くなるまで…。



そう、この異世界に召喚され、パーティの邪魔だと追放された主人公は、


――実は本当に邪魔者だった…。(泣)

次回は4/9(土)までの投稿が目標です。

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