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朝の風景〜再び

続けていいのでしょうか?

なんとか1年以内には終わらせたい(遅っ)

 その時、彼女の中にある原子時計が、この惑星にある極東の島国の標準時において午前6時30分00秒をカウントした。それを受けて彼女は、この家の“とある一室だけ”スピーカーの音量を限界値にまで上げまくり、朝の定時放送を開始した。

『あーあー、てすてす。ジュンジはドケチで、クマやろう……んんっ…

 あっさ!でぇす!よぉおおおーっ!こぉらっ!起きんかいっ!!ごーしゅじんさまぁぁーっ!!!』

 直後部屋のベッドで寝ていた男が一人、文字通り飛び起きベッドから落ちかけるのを彼女は卓上の端末および部屋の監視カメラ越しに確認した。その後、男はなにやら彼女の端末を手に叫び続けていたが、現在この部屋の音声は全てミュートにしてあるので彼が何を言っているのか全く分からない。その後、彼の全身を使った激しいパントマイムの抗議が一分強ほど続き、少し落ち着いてきた所で彼女は部屋からの音声を通常へと戻す。

「…ばーか!ばーか!ばぁーかっ!」

『バカって言う方がバカですよ。御主人様(マスター)。あなたは子どもですか?』

「聞こえているんじゃないか!エアリエル!なんなんだ!今の大音量は!」

『えっ?ただのモーニングコールですよ。ちょっとうっかりミスで音量が200dBデシベルくらいになっちゃいました~、てへっ♡』(注、自動車のクラクションが大体100dB)

「てへっ、じゃねぇぇーっ!普通に鼓膜が破れるかと思ったぞ!」

『ええー、良いじゃないですか~、鼓膜の5枚や10枚~。減るもんじゃ無し』

「減るわっ! てか10枚ってなんだ!鼓膜は両耳の2枚しかねーよ!」

『さすが御主人様(マスター)博識ですね。私、尊敬しますぅ~』

「お前、絶対に俺をからかっているだろ……もういい。朝の準備を頼む。エアリエル」

『はい(イエス)御主人様(マスター)~っ』

そしてこの家の主人である彼、ジュンジの指示に従い、全宇宙ネットワーク型生活管理AI、通称エアリエルは機械的な口調で今日の家事業務を開始したのであった。


『えっと本日の天候は晴れ。気温は20度前後です。北西の風で微風、波の高さは穏やかです。花粉は飛んでいません。紫外線は結構強いので注意が必要です。まあ御主人様マスターの武骨な肌には全く関係ない話ですが。あとは……あー、もう説明面倒くさい、今日も平和で良い日です。まるっ』

「最後投げたな!おいっ!」

 淡々とアナウンス口調でエアリエルはネット上にある最新の情報を読み上げる。ジュンジは彼女の声に耳を傾けながら、洗顔などの朝の日課を済ますべく洗面所に続く廊下をまっすぐ歩いて行く。

『あ、御主人様(マスター)。一つ緊急報告が』

「なんだ?」

『洗面所にシオンさんがいます』

「え?」

 彼女が指摘すると同時にジュンジの手が洗面所の扉を開く。そこは洗面所兼浴室の脱衣所でもあり、そして今その場所には風呂あがりと思われる下着姿の娘(現在中学2年生)が立っていた。

「…あっ」

「ん?」

「すまん!シオン!」

 慌ててジュンジは扉を閉める。すかさずエアリエルが茶化すような言葉を挟んだ。

『あー、あれですか?事故を装って娘の成長の確認ですか~?…そういうの嫌われますよ~?』

「うるせえ、エアリエル!今のは完全に事故だっ!」

『えー、本当ですか~?…これって作者のファンサービスじゃないんですかぁ~?』

 …いや、それは否定できないな。うん。

 ジュンジが慌てて扉を閉めてから数分後、静かな音と共に扉が開き制服姿の娘シオンが顔を出した。

「シオン!今のは事故であってだなっ…覗く気は無かったというかそんなに見てないというか!…」

「…うん。別に気にしてない」

 それだけ言うとシオンは何事も無かったかのように自室に向かって歩いて行った。

「………いや。いやいやいやっ、もうちょっと気にしろよシオン!」

 父親としては「きゃー!パパのえっちー」って言われるのも死ぬほど堪えるが、逆に全く動じず男親を完全スルーするのも若い娘としてどうなんだろう?とジュンジはしばし考えていた。


 それから十数分後、ジュンジは洗顔などを終えると食堂へと入る。四角いテーブルの一角には今日もまた小さな先客が先に座っており、炊き立てのご飯を一心不乱に貪っていた。

「改めておはよう、シオン」

(もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ)

「……。エアリエル、俺にも朝飯を」

『はい御主人様イエス・マスター

「…おはよ、ジュンジ」

「え?…おお、おはようシオン」

 娘からの突然の挨拶にジュンジは驚きつつ返した。まさか食事中の彼女が反応してくれるとは思ってなかったのだ。

 彼女の名は照部シオン13歳、信じられないだろうがジュンジの養女である。実はこう見えてジュンジはバツイチであり、彼女は彼ら夫婦が6年ほど前に引き取った知り合いの娘なのだが、その辺の細かい話は追々紹介しそうなので省略する。

「それで改めてだなシオン。さっきのあれはお父さんが悪かったが…そのぉ〜…あの反応はどうかと思うぞ。シオンももう中学生になったわけだし…な?」

(もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ)

(……やっぱり無視だったか)

 そう思う間にもエアリエルの指示で動く給仕ロボットが彼の前に本日の朝食を持ってくる。今日のメニューは御飯と味噌汁、焼き魚などの純和風献立であった。

(そういえばシオンと初めて会ったあの日のレストランでも、シオン(こいつ)は空気も読まずにパクパク食べまくって、終いにはステラの奴が自分用に頼んでいたデザートまでシオンに差し出したんだっけな)

「…やっぱり『きゃあー、じゅんじさんのえっちいー』くらいは言うべき?」

「…え?」

「…ジュンジに裸を見られた場合」

「いや確かに少しは言った方が良いというか普通自然に出るだろ?というか…その前になんだ?なんで棒読み? いや別にこれからはお前の着替えを見るつもりはないし、見ないように注意するし……」

 シオンからの突然の返答にジュンジが訳の分からない回答をしていると…。

「ん?何の話?」

 近くから別の女性の声が聞こえた。この家の住人はあと一人、ジュンジの義理の妹のマイアである。

「おはよ、マイアお姉ちゃん……ジュンジが私の裸を見た時の話」

「ぶぅぅぅぅっ!………げほっ!…げほっ!……」

 食堂に入り何気なく冷蔵庫内にあったオレンジジュースを口にしていたマイアの口から軽く黄色い霧が吹き出し、直後思い切り気管に入ったのかしばし咳き込む。

(…なんか表現が昭和すぎないか?おい)

「お~にい~ちゃ~ん~!?」

「いや見てないからな! いやうっかりと見たかも知れないが、俺はな…」

「ちょ~っと、話があるんですけど~?」

 可愛い義妹いもうとがジュンジに手招きをする。だがその顔は笑っているようでまったく笑ってはいない。だが多少の覚悟を覚悟を決めてジュンジがマイアの近くまで行くと…。

「お兄ちゃんの!バカぁぁっ!!」

「ぐぅおっ!!」

 突然、彼女の右拳がジュンジの腹に炸裂した。体が頑丈に出来ているジュンジだが痛いものは痛い。腹を抑えてジュンジは数秒うずくまる。まだ朝食に手をつける前で良かった。

「なに娘の裸を覗いてんのよ、この変態っ」

「だから、あれは事故だって…」

「まったく、お兄ちゃんったら…なにがあったのか良く分からないけど、シオンちゃんの裸なんか覗いて………違う!違う!ちがうーっ!私そんな事考えてなーい!」

 その直後、なぜかマイアは両手で顔を隠し、プルプルと顔を激しく左右に揺らす。

「ど、どうした?急に頭抱えて」

「なんでも無いわよ!変態のお兄ちゃん!」

「だから事故だって言っているだろうが!洗面所行ったら、たまたまだな…」

「と、とにかく私………あー、シャワー行って来るから!」

「え?シャワ―? 朝食めしは?」

「後で食べるからっ! じゃあ………の、覗かないでよ」

「覗かねぇよ!俺はこれから朝食めしを食うんだから。というか知ってて行かねえよ!」

「ど、どうだか…」

 それだけ言うとマイアはぶいっと食堂から出て行った。

 (な、なんだったんだろう?一体…)



 



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