いつでもどこでも短編小説『発明』
博士は困り果てていた。四方は巨大な壁に囲まれていて助けを呼ぶことはできない。
壁に空いた不気味な穴から大きな目がのぞいている。目の持ち主が穴から出てくると、それは大きな歯をもった醜い巨獣だということが分かった。
博士は本能的にその獣から逃げるべきだと悟った。しかし自分よりはるかに大きな相手から逃げることなどできるはずもなく、あっという間にとらえられてしまった。
「片方だけ作っても無意味だな」博士がそう言い終わらないうちに獣の歯が博士の体を切り裂いた。
自らを実験台にしたスモールライトの発明家の最期は、これ以上ないほどあっけなかった。