4/67
卒業パーティー 3
ザワザワザワ…
貴族であれば、まず今以上の身分を求めて行動していくのが原則である。男爵家の三男という不利な立場であるものの、男子なら騎士、あるいは文官や技官となり、成功を以って准男爵や騎士爵を目指していくものであるはずべきものなのに、実際自分も学園卒業後は文官の官吏試験を受ける予定であったようだが、そういう未練を残さず平民になるという。
「なッ!…平民であれば、この貴族学校に貴様の居場所はないぞ!」
ナルド王子がわめく。
「もとより卒業した身。速やかに御前を失礼いたします。…さ、お嬢様、まいりましょう。」
丁寧に頭を下げつつ王子に答えたあと、コリンヌ嬢に出発合図の声をかける。
「は、はい?」
凡庸な僕、もとい、じい様なので’わし’にしよう、いやいや心の中でいつも’わし’では肝心なときにボロがでるかもなので、’僕’でよいのじゃ。は、男爵三男、あらため、平民となり、悪役令嬢イベントを終えられた辺境伯令嬢コリンヌ様に肩を貸しながら、会場入口のびっくり眼の大柄な門番の横を通りすぎ、会場を後にした。