卒業パーティー 2
意識が10代から一気に別世界のお年寄りだった者へ引っ張られる自分。大量の別世界の記憶がある。…頭痛い…伯爵令嬢とぶつかったから…いやさ、お年寄りに乗っ取られないように防戦…いや、既にわしは年寄りだ、意識は…
「痛ッ!」
目の前で、立ち上がろうとする若い女人から小さな声が漏れ聞こえた。
あッ、先ほどので足を捻挫したんだな。
とっさに、令嬢の立ち上がりに手を貸すべく前に出る。
あッ。それは、王子と取り巻き、それに今回のことを仕掛けたアリッサ男爵令嬢の視界に敵対者側として名乗り出ることにも等しい行為に気付く。彼らの睨みつけるような視線が痛い。
まわりの貴族の子女たちはただただ傍観するのみで、本来は自分も貴族家の立場を考えるなら傍観するべき…いやいや、王子、第2王子ナルドは、伯爵令嬢、いや辺境伯令嬢コリンヌと結び付いてこそ大きな力を手にできるのであって、自分のわがままで地方の小領地しか持たぬ男爵令嬢にくら替えしたした場合、王になるわけでもないので、公爵どころか、そのまま入り婿として男爵となる可能性も高いのでは?
…いやいや考えるのはやめだ。困っている女人がいれば助けるのが日本の男子?たるものだ。…日本男子とは?
思考が混乱しながらも、手を貸し、肩を貸し、なんとか立ってもらうことができた。
「確か、そなたはヒモト男爵家の者だったな?」
ナルド王子が問うてくる。…落ちぶれていく可能性はあるとはいえ、いま現在の立場では、未だ両者の身分差は歴然で、我が男爵家は吹けば飛ぶように軽い。
「いえ、いま現在でヒモト男爵家の者ではありません。確かに少し前までヒモト男爵家の三男でありましたが、卒業後は家を追い出され、平民となることに決まっていました。」
決まっていなかったが、いま決めた。