プレイヤーカズヨシ
敵紹介
俺の名はカズヨシ。普通の会社員だ。どうしてか知らねえが、気づいたら、ナイトメア・オブ・ブラッド30の世界に迷い込んでいた。
「異世界転移か?」
頭がいい俺は小説を読み込んでいる。だから何が起きたのか、すぐに把握した。
「とりあえず、ステータスオープン」
試しにステータスを開いてみる。スタートボタンが無いから不安だったが、小説を読み込んでいる俺には問題なかった。普通の馬鹿なら何もできずに狼狽えるだけだ。
「レベル60……二週目で飽きたデータだ」
ステータスとアイテムは初めて作ったセーブデータのままだった。
「何でスタート地点の城門前に居るんだ? 確かクソダンジョンの神隠しダンジョンで放置してたはずなのに? 仲間は?」
こういう時、神様が説明するはずだが、現れない。
「まあいいや。居なくてもやり込んでるから分かる」
正直ワクワクして、口がにやける。
ナイトメア・オブ・ブラッド! 女を犯せるゲームだ! これが体験できるとは最高だ!
ナイトメア・オブ・ブラッド30は特別好きじゃない。ただ、人気だからやっただけ。そしてやってみたらクソゲーと分かった。
余りにも多すぎるイベント、真面にプレイしたら100時間を超える。はっきり言って飽きる。と言うか飽きた。
だから攻略サイトやプレイ動画を見て攻略した。
「しかし、ログアウトとかねえな。オンゲーじゃないから当たり前だが」
ステータス画面を操作しながら思い出す。
「アイテムボックスはゲームのように使える。ただし、装備するには実際に着替える必要がある。ゲームの世界に来たというより、ナイトメア・オブ・ブラッド30という異世界に迷い込んだ感じだ」
色々操作してみて思う。しかし異世界と呼ぶにも違和感がある。
「城門前に立っているのに誰も話しかけてこない」
人々は俺にぶつからないように、邪魔とも言わずに通り過ぎる。
「体感型ゲームをやっているみたいだな」
実際に異世界に来ると奇妙な気分だ。知っているゲームとはいえ、どこまでがゲームなのか見極めないと。
「確か、レイとかいうクソチート野郎の攻略サイトだと、ローズとチュリップってキャラが最強だったな」
どうやって行動するか考える。するとレイという名前を思い出して、怒りを思い出す!
「あの初心者狩りのクソチートが! ランク1でランク100の俺を倒せる訳がねえだろ!」
ナイトメア・オブ・ブラッドシリーズ! そのプレイヤーは必ずレイという名前にぶち当たる!
シリーズすべてを極めたとかいうクソ廃人だが、実際はただのクソチート野郎だ!
俺は外伝作品、FPSのナイトメア・オブ・ヒットマンであいつと対戦したことがある。
最初はランク1でハンドガンしか使えないから遊んでやろうと思った。こっちはランク100。ロケットランチャーが使えるから負けるはずなど無かった。初心者は負けて当然だから、俺が揉んでやろうと思った。親切心だ。
だがあいつはすべて避けた! それどころかハンドガンで狙撃しやがった!
「ありえねえ!」
拳を握りしめる! 何で異世界に来てあいつを思い出さなくちゃいけないんだ!
「あの野郎! 俺が手加減したのに殺しやがって! 0キル対100キル! なんで一回も殺せねえんだよ! チートしかねえよ!」
歯ぎしりが止まらない!
俺はあいつを掲示板やTwitterに晒した! 当然だ! 皆であいつを排除すべきだ! 俺みたいな被害者を出さないために!
「レイとかいうチート使いのクソ雑魚野郎。初心者狩りするから気を付けろ」
IDも何もかも晒した。当然の報いだ。だが思いがけないことになった!
「配信見てたけどお前が雑魚。ロケラン明後日の方向に撃ってんじゃねえよ。目が腐ってる」
「レイは確かに社会不適合者だけどお前は人生のゴミだから」
「お前初心者狩りやってる馬鹿だろ。反撃されてかなちいの~」
「ランク100で初心者はねえだろカス」
「レイは初心者講座やってただけ。確かにレイほどの実力者がサブ垢使うのはどうかって思うけど。何も知らない人がマッチングしたら初心者狩りだから。でもお前は初心者じゃねえよハゲ」
「左足の薬指一本で負けるクソ雑魚」
「ID買ったろお前。お前みたいな低能がマックスの100な訳ねえ。とりあえず通報したから」
なぜか俺が攻撃を受けた! クソ馬鹿野郎が! ネットで悪口しか書けない屑どもが! 現実じゃ虐められてるニートだろ! 俺は社会人だからゲームなんてやり込めねえんだよ! それに回線ラグかったし! ああいう奴が居るからゲームが廃れるんだ!
「くそったれ! 落ち着け! レイはここには居ない! ここは俺の世界だ! 俺だけの世界だ!」
何度も深呼吸して落ち着く。
「とにかく、まずはローズとチュリップを仲間にするか」
ここがゲームの通りなら、最強キャラを仲間にするのが最善だ。
「しかし、ローズとチュリップでどんなキャラだっけ?」
スマホがねえ。ほんっとクソだ! 俺は仕事で忙しいんだ! ゲームの事なんて覚える暇ねえんだよ!
「ムカつくぜクソ!」
傍に居る通行人をぶん殴る!
「ぐぎゃ!」
すると簡単に死んだ! 首の骨が楽勝で折れた! 当然だ! レベル60! モブNPCは高くてレベル10! 勝てるはずがない!
「とりあえず皆殺しにするか!」
クソ雑魚NPCを片っ端から殺す!
「人生ゴミだな! 生まれ変わってやり直せ!」
人生の負け犬どもを殺していく!
これだ! これがナイトメア・オブ・ブラッドの魅力だ! 勝ち組にしか許されない神ゲーだ!
「そこのお前! 動くな!」
クソ雑魚兵士が群れを成して襲い掛かる!
「俺に勝てると思ってんのか? 才能無いゴミがよ!」
とにかく殺しまくる。
「あ~クソ上司もこうやって殺しておけば良かったぜ!」
魔王を倒したら、神様が現れるだろ。そしたらこの力を現実に持って帰ろう。
そして現実の無能どもに、俺の凄さを分からせてやろう。
クソどもを殺し終えたら、心が落ち着いたので攻略に乗り出す。
「確か、魔術学園の傍だったはず」
うろ覚えの知識でローズを探す。
「何だ? いじめ?」
魔術学園の門まで来ると、すぐ近くで魔術師のような服を着る女の子が複数人のクソガキに囲まれていた。
「まさかあれがローズか?」
ステータス画面を開くが、名前は確認できない。クソゲーが!
「学校来るなって言ったよね! 才能無いくせに!」
「ママとパパのコネで入学したんだよね? 答えてよローズ?」
遠くから眺めていると名前が聞こえた。
「あんな虐められる雑魚がローズかよ」
しかし、面倒だから助けることにする。
「お前ら死ね」
「え? ぎゃ!」
面倒だから全員剣で切り殺す。バターみたいに切れる。さすが俺。強すぎる。
「あ、ありがとう……」
ローズの辛気臭い目と合う。イライラする。虐めてくださいって感じだ。
虐められる奴が悪いって言うが、その通りだ。俺だったら殺してる。
だが我慢だ。攻略のために必要な女だ。
「さっさと来い」
手を握って引っ張る。
「え?」
「いいから来い! てめえの意見なんて聞いてねえんだ!」
どんなイベントか知らねえが、ここは俺の世界だ。文句は言わせない。
「い、いや!」
それでも逆らいやがる!
「ゲームのキャラが俺に逆らうな!」
一発ビンタを叩き込む!
すると石垣に顔面から突っ込む。いい気味だ。
「い、いたい……」
鼻血が出ている。歯も折れている。
これで分かっただろう。
「逆らうともっと痛い目に合わせるぞ?」
ローズは涙目で鼻を押さえながら頷く。
「次はザークを殺さないと」
少しずつ思い出してきた。ザークとかいうキモデブが大通りに居るはずだ。
あいつと戦えば、どこまでゲームか分かるはず。
大通りに行くと、予想通りザークが居た。イベントと同じく市民を切り付けていた。最低な奴だ。
「止めろ豚野郎!」
大声で怒鳴ると頭に電子音が響く。
「チュートリアルを開始します」
そして時が止まる。目の前にホログラムのような映像が流れる。
「体感型ゲームだな」
呪文の使い方や必殺技の出し方が映し出される。
コントローラーとは全く違い、実際に体を動かしたり、声に出したりする必要がある。
チュートリアルが出て良かった。これで無敵だ。
「いでぇええよ!」
さっくりとザークを撃退する。
すると電子音が流れる。
「チュートリアルを終了します」
それっきり電子音は鳴らなくなった。
「クソ女、こっちに来い」
ローズを前に来させる。そして手をかざす。
「や、やめて……攻撃しないで……謝るから」
なぜか泣き出す。馬鹿みたいだ。
「初級回復魔法」
するとローズの傷が塞がる。
「さすが俺。強すぎる」
ローズの腹を殴る。
「ザークを追うぞ。ついてこい」
命令するとせき込みながら頷く。
「あいつを殺せば面倒なことにはならないはずだ」
確かあいつはこの後4回も戦う。そんな面倒なことしたくない。
幸い、体は動く。ゲームのようにイベントで体が動かないということも無い。チュートリアルだけが特別だった訳だ。
「ありがとうございます」
「邪魔だ退け」
汚い爺が近づいてきたので切り殺し、急いでザークを追う。逃がすか!
「待て! 話し合おう!」
ザークを捕まえると、突然、ザークが変なことを言い出した。聞いてみると、憑依者だった!
笑える! ザークに憑依するなんて、俺に殺されて欲しいって言ってるような者だ!
しかもシステムも理解していないクソ初心者! 死んで出直せカスが!
そう思って、剣を振り下ろした。そしたらあいつ! とんでもなく卑怯なことをしてきやがった!
麻痺! 初心者だと思って手加減してたらつけあがりやがって!
「うるせえ初心者が! ザークのスキルぐらい把握しておけ!」
何が初心者だ! 経験者だって分かってたら殺せてた! 本気を出した!
結局、逃げられた!
レイに襲い掛かったプレイヤー、カズヨシは、麻痺の魔法を受けて、広場で無様にうずくまる。
「だ、大丈夫?」
すぐ傍でローズがオロオロと心配そうに体を揺する。
「麻痺ってんだ! さっさと解除しろクソ女!」
ギリギリと歯を食いしばりながら、ローズを睨む。
「で、でも、私、状態回復の魔法なんて使えない。魔術師だから」
「は! お前最強キャラだろ! なんで使えねえんだよ!」
射殺すように睨み続ける。
「ご、ごめんなさい!」
ローズは可哀そうに、ブルブルと震える。カズヨシの罵倒は止まらない。
「クソが! てめえ! 捨てるぞ! 良いのか! またクラスメイトにいじめられるぞ!」
「そ、それは嫌!」
「ならさっさと治せクソが! 初心者か! 殺すぞ!」
「で、でもどうやって?」
「状態回復の薬買ってこい! そんなのも分かんねえのかよ雑魚が! マジ殺すぞ!」
「で、でも、お金無い……」
「は! なんで持ってねえんだよ! 何のために居るんだよ!」
「ご、ごめんなさい」
「謝ることしかできねえのか! 金がねえなら体売ってこい! そのくせえマ〇コで稼いでこい!」
「い、いや!」
「お前絶対に殺す!」
カズヨシは麻痺が治るまで散々罵倒する。
市民はカズヨシを怖がり、見ているだけだった。
そしてカズヨシは麻痺が時間経過で治ると、裏拳をローズの顔面に叩き込む。
「クソが! 死ね!」
何度も何度も叩く。
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
ローズは必死に謝った。




