表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 香坂律稀

私はいつも蓋をする。

嫌なことには、問答無用で蓋。まぁ、要するに「臭いものに蓋」だ。

悪かったテストの点数に蓋、負の感情を持ったままの付き合いに蓋、面倒くさいことから逃げるために蓋をする。

いつから蓋をするようになったのかは覚えていない。それほど前からやっていたということだろう。だって面倒くさいし。嫌なことはしたくないのが普通だし。多分他の人だってやってるだろうし。

「ねぇー、遊びに行こうよー」

「いいねぇ、行こー」

人間関係を上手くいかせるために、蓋は必要だ。何かに目をそらさなきゃいけないことなんて、たくさんある。だから、蓋するのは「普通」なんだ。

「本当にあいつ嫌い!マジでムカつくんだけどー!ねぇそう思わない?」

この子はこう言うけど、あいつに私はいい印象しか持っていないけど、ここは面倒だから意見を会わせよう。ほらね、こうやって私は自分の感情に蓋をする。

「だよねー、私もあいつ嫌い!何様のつもりって感じー!」

私みたいな、こういう人の名前を私は知ってる。八方美人っていう不名誉な名前を。でも、私はその事実に蓋をする。自分の欠点を見たくないし、自己嫌悪だってしたくない。

「あー、あんたは話が分かって、ほんと最高ー。やっぱ愚痴れる人っていいよねー!ってかさ、話変わるけど、うちのクラスの男子で誰の顔が好き?私はー、何人かいるんだけどー今のお気に入りはねー」

ほらね、こうして蓋をすれば人間関係は上手くいく。クラス内の権力が強いキラキラ女子に取り入れたら、疎外されることなんか無いから。疎外されて、一人で居るよりも、内心嫌いでも誰かと一緒の方がいい。それが権力の強い人なら、なおさら。

だから私は蓋をする。見なかったふりをし続ける。心に出来た、ちょっとした傷を、何にでもないような物への違和感を、人との明らかな価値観の違いを―――。

いつか、目を反らし続けた罰をくらうのだろうか。いつか、八方美人だと大勢に罵られる時が来るのだろうか。いつか、私を一人にして、皆去ってしまうのだろうか。


いや、「皆」ってダレだ?


今まで取り入ってきた人達だろうか、それとも、全く関係無かった人達だろうか、それとも、本当に全員、私の前から居なくなってしまうのだろうか?

私はいつも不安定だ。その事実を認めたくない。いや、認めるべきじゃない。だから、今日も、この感情に「蓋」をしてやろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ