プロローグ
ひょっとしたら、全部夢だったのかも。
そうだったらいいな、と思う事がしょっちゅうある。
全部、希望。
違うんだろうなって考えながらする、空想。
そうであればいい、と思う権利は誰にでもある。
世界が青い。
天井も、床も、壁も。
四方八方余すところ無く。ただ、青い。
そこに居る私以外は全部、青。私だけが、場違いみたいに。
浮いているのかな。
でも足が着いている感じだし。
もし浮いているなら、着地のことも考えなくちゃいけない。当たり前、人間はずっと浮いている事なんて、出来ない。
少し考えたけれど、上下左右も解らないのだから、どちらであっても大して意味に違いは無いだろうな、というところに思い至った。
もしかすると、夢かもしれない。
それなら、さめないで欲しい。どうかこのまま、いさせてほしい。
頬っぺたに触れるのは空気だろうか?
誰かの手かもしれない。誰の?
誰かの名前が浮かんだけれど、確認する前にどこかへ沈んでしまった。
私の頭の中の、どこか。深くて遠いところ。
私自身も、よく分からないくらい。
気になったけれど、頬っぺたを触る感触が消えていたので、もう考えない事にした。
気にしてなかったけど、静かだった。何の音も聞こえない。
遠くでスプーンを落とした音だって、聞き取れそうなくらい。それだけ静かだ。
私は音楽が好きだけど、静かなのも同じくらい好きだからどうってことはない。むしろ嬉しい。飛び跳ねて喜んじゃうくらい。
けれど、それはまたの機会に。
このまま、目を瞑ろう。
ここが夢だって、関係ない。
ほら、こうしていると、眠たくなってくる。夢の中でだって、眠れるのだろう。
夢だって、見れるかもしれない。
夢の中で見る夢って、どんなのだろう。昔そういうおとぎばなしを誰かに読んでもらった事があった。違う、あれは眠り続けるお姫様の話だったか。
おとぎばなしのお姫様は、いつだって決まって王子様が起こしに来てくれる。
余計なお世話だ。
どうして、邪魔するの?
お姫様はそう思ったに違いない。けれど、口から出るのは綺麗な「ありがとう」。
だって、おとぎばなしの国だ。
きれいなモノしか、出てこない。
きれいなモノしか生きられないようになっているんだろう。
どこでだって同じ。違うのはせいぜい、現実くらいのものだ。
ここはどうだろう?
一面の青。青は、きれいだ。空と同じ色。
空が決まってきれいだとは思わないけれど、多分そう思うのは、私が単純に青色が好きだから。
また目を瞑る。
真っ暗。
まぶたの裏には、何も無い。
そうしていると、色々なものが浮かび上がってくる。
何も無いほうが、まだマシな色々が。
目を開けようかと思うけれど、そうしない方がいいのかも。
どうせ、こうなのだ。
現実っていつだって。
目を開けたって、閉じたって。同じくらい嫌なものがある。
それならいっそ、目なんか見えなければいい。そうも思ったけれど、そうしたらきっと別の嫌なことがあるんだろう。私たちに、逃げ場は無いんだと思う。
だからせめて今くらいは。
この青の中で、眠りたい。
夢の中で見る夢を試してみるのも、いいかもしれない。