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疫病神と言われた少女

 どうやらここは軍事施設のようで敷地内に俺の部屋が用意されていた。

 この場所まで来るのに30分以上歩かされたが外に出ることは一度もなかった。

 なぜなら外は一酸化炭素の比重が大きく人間では生きていけないからである。


 部屋は三畳程のサイズで、細長いベンチのようなベッドが二つ用意されていた。


「相部屋か、ナナミ、俺の相方はどんな人なの?」


 ナナミは何を言われたか分からないようなキョトンとした顔をした。

 あ、そうか、人工生命体(ガジェット)操者(ディバー)と一身一体の関係だから部屋も同じと言うわけか。


「ごめん、改めてよろしくお願いするよナナミ。迷惑をかけると思うがよろしく頼むよ」


「……はい、では次は機甲騎兵(トルーパー)のほうへ案内いたします」


 ナナミはどこかよそよそしい、まるで俺と仲良くなるのを避けるように。

「こちらです」


 そう言うと立方体に右手をかざし重厚な扉を開けた。

 そこにはすごい数のロボットがあった。

 大きさは5m程だが紛れもなくロボットだすごい二足歩行でマニュピレータも人間の指と同じように作ってある。

 何よりちゃんと頭があるのが良いじゃないか。

 頭がないロボットなんてただの重機、工事現場で働いてろって話でしょ。

「なんだおめぇらは!」

 頭のハゲた白髪の老人が俺達のほうにどかどかとやって来る。

 手には怒級サイズの工具を持って。


「認識番号(ゼロ)・トモヤです、自分の機体を見に来ました」


「ああ、お前があれの操者(ディバー)か……」


 そう言うと俺を上から下までなめるように見ると親指で俺の乗る機体を指差す。


 そこにあったのは装甲もなく、頭部もないただの作業用ロボットだった。


「お前なにやったんだ、機甲騎兵(トルーパー)隊に作業用が来たの初めてだぞ」


 白髪の老人は名はA・ランゴー、文字一つでアリスと同じ上位存在で階級は将軍(ジェネラル)だった。


 なんで将軍(ジェネラル)がツナギ姿で工具片手に作業してるんだとも思ったが異世界セミクレンでも自ら泥まみれになり働いてた貴族もいたのでどこの世界でもそういう人はいるのだろう。



 しかし新人に作業用機甲騎兵(トルーパー)かそして(ゼロ)、これはお前みたいな異物は邪魔だから死ねと言うところだろうな。


 とは言え作業用でもロボットに乗れるのだこんなに嬉しいことはない。

 カスタムしても良いんだろか?


 ランゴーに聞いたらジャンク置き場の部品なら好きに使って良いそうだ。


「工具はちゃんとあった場所に戻しておけよ」


「はい、ありがとうございます!」


 俺は意気揚々とジャンク置き場に向かった。

 そこには被弾した物や古くて廃棄された機体が山のように転がっていた。


 俺がもらった機体TPー05Wは第2世代型で現行の機甲騎兵(トルーパー)の1世代前の機体だ、作業用と言っても機甲騎兵(トルーパー)の骨格を使っており装甲と頭がないだけのものだ。


 無いなら、つければ良い。

 一通りの装甲を持ってきてから気がついたのだが俺の機甲騎兵(トルーパー)はロートルだ。動作確認をすると動きがかなり悪い。


 まずやることはレストアだな 。

だが(ゼロ)で新兵の俺には新品パーツは支給されない。


 ジャンクパーツで何とかするしかないのだ。

 魔法に消耗した物品を新品同様に回復させる生活魔法がある。

 この消耗した部品を回復させる魔法はリペアMPは1消費する。

 ただしこの魔法部品一個につき1MP消費する1MPで全て直るわけではないのだ。


 トランジスタ1個で1MPを使う。電子回路を直すとそれだけでMPが空になる。

 これはファンタジー世界の弊害だろう、あちらは単純構造のものしかない一つの製品を完全に直したとしても100MPも使わない。


 俺の現在のMP残量は999、つまり999個の部品を直したら魔法は今後使うことができなくなる。

 できれば切り札として取っておきたい。

 魔力の回復手段が無い以上魔法はできるだけ使いたくないが背に腹は代えられない、ジャンクで補えない部品、パッキンやオイル等はリペアを使おう。。


 俺は立方体(キューブ)からTPー05Aと戦闘用機甲騎兵(トルーパー)TPー05Cと現行型TPー06Cの設計図をダウンロードして相違点を検証した。


 頭は全てセンサー類で占めており重要だ、これはジャンクから探しだそう。できれば現行型のものがスペック的に良いな、コネクターは同型で代替できるようだ。


 ジャンクからパーツをいくつか取り出すとどこからともなく5人の男達が集まりだした。


「おいおい(ゼロ)がジャンクを持っていくんじゃねーよ」

 ニヤニヤしながら男達は俺が取り出したジャンクを蹴りつける。

 男達は俺よりも上級の番号で階級も上だ、下手に逆らわない方が良いだろう。

「A・ランゴーさんに許可をいただきましたが」


「俺達の許可を取ってねぇだろ!」


 そう言うと俺の頬をグーで殴る、グガァと言う声と共に男は拳を押さえて倒れこむ。

 俺は何もしていない、スキル鏡面反射の影響だ、これは相手が俺を攻撃した場合同じダメージを相手に返すスキルであるがインパクトの瞬間は2倍のダメージになる。ちなみに遠距離攻撃の場合発動しないうえにクールタイムが10秒もあるクソ固定(パッシブ)スキルだ。


「このやろう!」

 男達は声を荒げて威嚇してくる、中には鉄パイプを持ちだした者までいる

「私はなにもしてませんよ?」

「うるせぇ死ね!」

 そう言うと蹴りや鉄パイプで俺をメタメタに殴る。

 避けるのは容易(たやす)いが避けるとヒートアップするのがイジメの基本そしてこいつらは俺よりも階級が上なのでそのまま受け続けることにした。

 俺は異世界セミクレンの勇者、この程度の攻撃など屁でもない。

 とは言え地味に痛い。

「ぐあぁ!」

 10秒のクールダウンが終わって鏡面反射が作用した。

俺をパイプで殴った男が吹き飛ぶ。

 鉄パイプで殴ったんだ2倍の衝撃だと死ぬんじゃないかあいつ。


 さんざん殴ったのに傷一つ無いうえに、指一つ動かさず後ろに腕を組んでる俺に不気味さを感じたのか、攻撃対象をナナミの方に変えようとしているようだ。


 だがナナミを見る男達の動きが止まった。


「おい、あの人工生命体(ガジェット)白髪じゃねぇか?」

「おお本当だ、やべぇぜ俺達にも疫病神が()いちまう」

「新人、お前死んだわ」


 男達は思い思いの捨て台詞(せりふ)を吐くと、余程かかわり合いになりたくないのか倒れた男を担ぎほうほうの(てい)で逃げていった。


「疫病神ってなんだい?」


「私は白い髪の失敗作、操者(ディバー)殺しのGT(ガジェット)です」

 通常人工生命体の髪の色は桃色、緑色、青色という自然にない色をだし人間と見分けやすくしているのだと言う。

 だがまれに白い髪の人工生命体が生まれる 、白い髪の人工生命体は体が弱く貧弱であるためしばしば操者(ディバー)の足を引っ張るのだ。


 それ故に疫病神と言われる。


 実際はそんなことはないと論文で証明されているのだが、(げん)(かつ)操者(ディバー)達は白い髪を嫌いパートナーを組むものはいない。。

 その為白い髪の人工生命体(ガジェット)はランクや階級が下の者に強制的にまわされる。


「そうか」と俺は一言言うとナナミの頭を撫でた。


 もちろん速攻で(はた)かれました。


「……変な人」

 そう言うとナナミは頬を赤く染めた。

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