機械の町は硝煙のニオイ
ここはどこだ?
俺の名前は穐本 朋也40歳。
異世界セミクレンで勇者トモヤとして魔王を倒して帰還魔法で地球に戻ってきたはずだった。
だが俺の目に映った物は赤茶けた空幾何学的建築物どれをとっても地球とは異なる物ばかりだ。
人は顔にマスクを装着しレインコートのようなものを着ている。
俺の知るかぎり地球にも異世界セミクレンでもこんな場所はない。
歩く人々は異様な出で立ちの俺を取り囲みじろじろと見回す。
俺からしたらあんたらのほうが異様な出で立ちなんだがな。
それにしても、こいつらの言語が分からない。スキルであらゆる言語が使えるはずなのに全く分からない。
なぜか体が重い手足の動きも鈍い。
重力が違うのだろか?
「きもち悪い……」
すさまじい吐き気がする、なんなんだ。
景色がぼやける。
くそ、意識を手放しそうだ。
心なしか呼吸も苦しくなってきた。
バッドスーテータスになっている訳でもないのにどういうことだ。
意識が無くなることに抗うが抵抗むなしく俺は意識を失ってしまった。
次に目を覚ましたとき俺はベッドの上に寝ていた。
天井には多数の光源があり眩しくて目を細める。
周りは窓一つ無い白い壁、それに出入り口もない。
『もしもぉし、聞こえますかぁ?』
どこからともなく間の抜けた声が聞こえる。
周りに人はいない、俺の気が狂ったのだろうか?
『私はちゃんと存在する人間ですよぉ。私の名前はA・アリス、階級は准将ですぅ。今あなたの頭にぃ直接語りかけてますぅ』
「ここはどこだ」
『ここは軍の施設ですぅ、良かったですねぇ通報がもう少し遅れていればぁ、あなた一酸化炭素中毒で死んでいましたよぉ?』
「すまない助かった」
『お礼は良いですぅ、それよりもぉあなたにぃ質問があります』
「拒否権はないのだろ? なら早くすれば良い」
『理解が早くて~助かりまぁす』
「何が聞きたい
『ではぁ今より質問しますのでぇYESかNOで答えてください』
「YES」
『これからあなたがぁ答える返答次第ではぁ、あなたは死刑になりまぁす。よろしいですかぁ』
「YES」
選択権がないのにバカな質問をするものだ。
『ではまずぅ、あなたはぁボルボクスのスパイですかぁ?』
「NO」
『あなたはぁ人間ですかぁ?』
「YES」
『あなたはぁ私達の敵ですかぁ?』
「NO」
その後もアリスの質問は続いた。
100問以上答えた、その中には重複する質問もあり辟易した。
『これが最後の質問です。あなたは我が軍に入り敵と戦うことを誓いますか』
急に真面目に質問をするアリス、この質問はおちゃらけた物ではないのだろう。
敵が何者か知らないが現状こいつらの世話になるしかない。
ならば敵は倒すのみ、前の世界でもやっていた大量虐殺だ。
「YES」
『おめでとう、あなたは今日からザンスカロル帝国の一員です。あなたの認証番号は0です。今日から0・トモヤと名乗りなさい』
命名された番号は決められたその瞬間バーコードのような線と共に俺の右腕に刻印された。
新たな名前は番号で、しかも0とか俺の中二心をくすぐるぜ。
にしてもだ、不明な事が多すぎる。
俺はアリスに現状確認の為の情報がほしいと告げたが
聞きたい事は俺にあてがわれる人工生命体に聞きなさいと言って通信終了された。
「ちょ、待てよ!」
俺の叫びはアリスに届くことはなかった。
「よろしいでしょうか?」
振り向くとそこには白髪赤眼の12歳位の少女がいた。
「君は?」
「私は第三世代型人工生命体のナナミと申します」
その少女は自分を人工生命体と良い俺に挨拶をする。
ナナミに現状確認の為の情報が欲しいと言ったら床から立方体が浮き上がりそこに手を置くように指示された。
その瞬間この世界の情報が俺に流れ込んできた。
それはまるで死の直前に見る走馬灯のような一瞬が何時間にも感じられて知識が俺の中に溶け込む。
そして同時に絶望したやはり地球ではない。
最悪未来の世界かとも思ったがそんなこともなかった。
そして絶望はもう一つあった。この世界にはマナの根源たる植物が無いのだ、いや正確にはあるのだが観賞用として上級士官だけが買うことができる、しかもお高いのである。
これでは魔法は使えない。
いや使えるのだが回復することができない、MPを回復させるのはマナなのだ、それが無いと言うことは現状使えないのと同義だ。
先程のアリスは俺の上官にあたり旅団を指揮している。
俺はそこの一部隊に配属されているようだ。
Aは超上級のエリート、0の文字は能無し、無能と判断された者の名前らしい。
4文字は死ぬことを背負わされし者。
つまり俺はごみクソ虫と言う烙印を押されたのだ。
そして俺達人間の敵は機械生命体ゾディアン、それを機甲騎兵で殺すのが生きとし生きる者の使命なのだそうだ。
ロボットの世界、ファンタジーから一転SFの世界に投げ出されたわけか。
ヒャッホーーー!
実は俺はこういう世界のほうが好きだ、そして機甲騎兵の操作方法も先程の走馬灯モドキで覚えた。
つまりあれは知識をダウンロードする機能があるわけか。
「操者様が寝ていられる間にナノマシーンを使い脳に人工シナプスを移植して言語をダウンロードしてあります」
その人工シナプスは神経を通して右腕の手のひらまでつながっており、全てのことを右腕で行うらしい。
「それではお部屋にご案内いたします」
ナナミが俺についてくるように促す。
「なあナナミ俺のことは操者様じゃなくてトモヤと呼んでくれ」
「拒否いたします」
クッまさかのツン系とはな。
異世界セミクレンのクレア姫も最初はツン系だったのだが俺が帰ると言い出したら逆告白されてしまった。
そして帰らないで欲しいと。
彼女は16歳で王女、正直残ろうかとも思ったがやはり日本の生活が恋しいのだアニメや漫画、ゲームをやりたい。
だから地球に帰ろうと決意したのに、現状はまた別の異世界だ。
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