死ぬなら
この王宮に居れば幸せに暮らせるわ。
私の過去を分かってくれる人なんて多元には…。
あんな場所に居た私を助けてくれる人なんていなかったのに。
私達はソファーに座る。
こんな関係は幸せすぎて怖いけど。
「また、お仕事?」
『そうだが』
「女の人と遊ぶのでしょう?なら、私は行くわ」
ソファーから立ち上がると出かけようとする私。
私なんて要らないのかな?
『待てよ。いつから俺の女になったのか覚えているだろう?』
腕を掴まれて引き寄せられる。
覚えてはいるけど私には接してくれないじゃん。
「覚えているわよ…。でも、アレン…んっ!」
いきなり唇を奪われて動揺する私。
まぁ、いいや。
『ミッシェル…そんな顔するなよ?』
「お仕事行きなさいよ…アレン」
『じゃあ、行くよ』
後姿を見送ると涙が溢れて来る。
素直になれる訳がないじゃないの。
私は父親を殺して感情さえ失っていたんだから。
「お母さんっ!?なんで、なんで!」
血まみれの母親を見ると涙が溢れて来るどころか恐怖しかなかった。
胸を拳銃で撃ちぬかれている。
『お前も同じ目になるか?』
「死ね…なんで、お母さんを殺すのよ。答えて」
『俺には新しい女が出来たんだ。必要ねぇだろ』
私は悲しさと怒りで頭が混乱していた。
「あああああああああああああ!」
私は服に隠し持っていた拳銃を取り出して、父親を狙う。
殺してやる。
殺意が湧いて来て殺してしまった。
赤い鮮血が飛び散る部屋で私は唖然とする。
内戦が続く地域で生まれて平和とは無縁だった私。
父親を殺しても大丈夫。
拳銃を握り締めて家を出る。
行く当てはなかったけど。
その時に出会った彼は私を見て囁く。
『人殺し…。お前は俺と同じだな』
と、囁かれて私は驚いた。
私の身体は母親の血で赤く染まっている。
しかも、拳銃を握っているし。
『こんな地域にいたら気が狂うよなぁ?俺の女になれば幸せになれるぜ?』
私は無言で俯いたまま。
しびれを切らしたのか、私を抱きあげてこの王宮に連れて来られた。
「寝ていたんだ…もう、こんな時間だわ」
身体を起こすと白いスーツがかけてあった。
もしかして、帰って来たのかな。
部屋を見渡すと彼が居る。
「おかえりなさい」
『うなされていたが大丈夫か?』
「…大丈夫」
スーツを肩にかけてあげる。
彼はマフィア。
だから、お金持ち。
怖くはないから平気。
『ミッシェル…。お前は今すぐこの場所から逃げろ』
「えっ…?どうして?」
『国際警察が場所を特定したらしくてな…。お前だけには逃げて欲しい』
「行かないわ!死ぬ時は一緒よ」
国際警察が特定してしまったんだ。
でも、死ぬ時は一緒だから。
私は言う。
「アレンは私を助けてくれたのよ!それに、私はアレンを助ける」
『分かった』
その日の夜、私は国際警察の本部を爆破した。
少しは時間が稼げるから。
『アレン様…!警察が周囲を囲みました』
『いいぞ、好きなようにしてやれ』
アレンと私は武器を持ち戦う。
家臣たちも武器を取る。
警察の人数の方が多いけど勝てるよね。
『居たぞ!』
警察が私を見つけてしまう。
「死ねぇえええ!」
拳銃を発砲して警察を撃った。
アレンは何処なの!?
爆風で怪我をしたけど我慢しないと。
「アレン!返事をしてお願い!」
階段を駆け上がる。
「あああっ!」
警察と戦った時に切られた腹部に血が滲む出す。
痛みでうずくまる。
アレン…アレン…。
「はぁはぁ…お願い…助けて…」
すると叫び声がした。
『お前なんかに家の財産を渡すかよ!』
アレンが戦っている。
助けてあげないと…。
「ああっ!まだ、出来る」
階段を登り終えると鉄骨上で戦っている。
『そこかっ!』
すると弾が飛んで来る。
「あああああああああああっ!」
胸を貫通して私は血を吐いて倒れ込む。
痛い、熱い激痛が胸を通る。
『!?ミッシェル…!しっかりしろ』
呼吸さえ出来ないぐらい痛い。
「アレン…役に…たって…な…い…ゴボッ!」
『お、おい!』
「ありがとう…先に行くね」
私は息絶えた。
『ミッシェル…俺もじゃあ、行くわ』
俺は自分の胸をナイフで刺した。
死ぬ時は一緒って約束しただろ?
だから俺も行くんだぜ。
後日、二人の亡骸は執事に寄って発見された。